福島県教育センター所報ふくしま No.35(S53/1978.2) -006/026page
外接の場合は正 角形までしか計算しませんが,どちら の場合も要した時間は2分足らずでした。電卓の威力は すばらしいですね。
問い (1)についてはわかりました。次に,(2)の方法に ついて説明して下さい。
答え これは,数学的には, (逆正接関数)に よって表される特別な公式を用いて計算する方法です。 このきっかけは,1671年にグレゴリーが公式
を発見したことに始まります。なお,この公式の導き出 し方については,どの微積分の本にも書いてあります。
さて,グレゴリーの公式を用いてπの値を求めるひと つのアイデアは,この公式をそのまま使おうというもの です。この公式で x=1 とおきますと,ライプニッツ (1646〜1716)の公式といわれる
きれいな公式が導かれます。しかし,この級数は収束が 非常に遅いので実さいのπの値の計算には役立ちません。 シャープは1705年に とおいて得られる級数
から,πの値を小数点以下71桁まで計算しました。
グレゴリーの公式の右辺の級数は,正の項と負の項が 互い違いに出てくる級数で,交項級数といわれますが,
この級数でさらに
第n番目の項の大きさ>第(n+1)番目の項の大きさ が成り立っていますので,この級数の第n番目の項まで とって計算したときの項打ち切りによる誤差の大きさ は,次の第(n+1)番目の項より小さくなることがわか っていますから,あらかじめ必要桁数を考えておけば, 第何項までこの級数を計算すればよいかが前もってわか ります。
もうひとつのアイデアは,逆正接関数によって,もっ と能率的にπを表す公式を見い出して,グレゴリーの公 式によって計算しようというものです。 マチン(1680〜1752)は,公式
を発見し,これをグレゴリーの公式によって展開し,
を導き,πの値を100桁まで計算しています。シャンクス (W.Shanks)も1874年に,この公式を用いて707桁まで 計算しましたが,1946年に,ファーガソンが,小数点以 下528桁目から先が間違っていることを確かめました。
なお,1761年にランベルトはπが無理数(循環しない 無限小数)であることを証明しました。
逆正接関数によって,πを能率的に表す公式は,その 後もいろいろ考えられました。主なものをあげますと,
ラザフォードは自分の公式を用いて,1853年に,440桁 まで計算しています。
史上初めてπの値を10万桁まで計算したのは, D.Shanks とJ.W.Wrenchの2人のアメリカ人で, 彼らは1961年7月コンピューターIBM7090型により, 8時間43分の時間を費やしてこの結果を得ました。この ときに用いた公式は,ステルマーの公式でした。
問い マチンの公式などから,グレゴリーの公式を用 いてπの値を計算するこの方法についてはよくわかりま したがマチンは,彼の公式をどのようにして発見した のでしょうか。
答え それは,大変興味のある問題です。ラザフォー ド,ステルマー,ガウスなどの公式はいずれもマチンの 公式の変形と見られますから,発見としてはマチンの公 式の方がはるかに価値があり皇す。マチンの公式の正し