福島県教育センター所報ふくしま No.41(S54/1979.6) -010/038page
―正規分布表は,どのようにして作るのですか―
教科教育部 渡 辺 十 三
話は少し古くなりますが,国公立大共通一次試験 54年1月13,14の両日に渡って実施され,その結 果の得点分布,平均点(636.1点),標準偏差(134.3 点)などが,大学入試センターから,2月6日の新 聞紙上に発表されました。そして,ある新聞では, 今回の試験の得点分布が,およそ正規分布をしてい るので,自分の得点から,自分が全体の中で,およ そ上から何%の位置にあるかを,正規分布表を用い て知る方法についても簡単にのべてありました。
ふつう,正規分布表といわれているものは,平均 値が0,標準偏差が1の正規分布(これを標準正規分布といいます)曲線
において,右図kの値と, それに対応する斜線部分の 面積(確率)とを表にした ものをいいます。右の表は その一部です。ここで,点 は,平均から,標準偏差の k倍ずれていることを示す 値です。また,この曲線と x軸とで囲まれた部分の面 積は1で,y軸は,この面 積を2等分していますので y軸の左右の部分はそれぞ れ0.5となります。それで, たとえば,平均から,標準 偏差の0.8倍ずれているも のは,全体の中で,上から 0.5−0.2881=0.2119 すなわち,約21%の位置に あることがわかるわけです。 また,この曲線は,y軸に 関して対称ですから,平均 から,標準偏差の−0.8倍ずれているものは,全体の 中で,上から0.5+0.2881=0.7881,すなわち,約 79%の位置にあることがわかります。
たとえば,今回の共通一次試験で,798点の人は, 自分の得点が,平均点から標準偏差の
(798−636.1)÷134.3≒1.2
倍ずれていますから,この表によって,全体の中で 上から,0.5−0.3849=0.1151,約11〜12%の位置 にいることがわかる,というわけです。
この正規分布表は,統計の本はもちろん,高校の 教2A,数3,応用数学の教科書のうしろに,付表 としてかかげられてあり,極めて大切な表なのです が,どうしたわけか,この表のつくり方について, くわしく書いてある本はありません。それで,よく いろいろな方々から,正規分布表は,どのようにし て作るのですか,という標題のような質問をされま す。そこで,今回は,私の作った正規分布表につい て,その作成法をのペることにします。
さて,正規分布は,平均値mと,標準偏差бによ って決まる分布なので,この曲線はいろいろあるわ けですが,実は,ちょっとした変数変換をすること によって,結局図のように,標準正規分布の場合に 帰結されることがわかっています。にの部分の説明
は,教3の教科書にくわしく書いてあります。)
このようなわけで,
として,このkの値と,それに対する確率
を表にしたものが,正規分布表なのです。つまり, 正規分布表の実体は,この定積分であったわけです。