福島県教育センター所報ふくしま No.54(S56/1981.12) -019/034page
領においては「地域や学校の実態および生徒の能力・適性・進路などを充分に考慮し,・・・適切な教育課程を編成するものとする。」と一般方針の中に掲げられている。これに基づき,多様を生徒ひとりひとりの学力の伸展を図る有効を方法の一つとして,学習習熟度別学級編成は,既に多くの学校により実践されてきている。
(2)習熟度別学習ということを考える場合,能力別学習との違いをはっきりさせておく必要がある。習熟度別学習は94.2%に達する高校進学率によって高校生の能力の多様化が進み,落ちこぼれ,怠学をどの学習についていけない生徒をどうするかが,大きな課題となってきたという状況の中で考えられねばならない。つまり,習熟度別学習はそうした状況に見合う学習形態でなければならないのである。
これについては前初等中等教育局高等学校教育課長の菱村幸彦氏が「習熟度別学級編成の考え方」の中で次のように述べている。「従来の能力別とか学力別という場合,どうしても一定のイメージでとらえられ,とかく誤解をまねくおそれがある。すなわち,能力を固定的にとらえ,生徒を一定の尺度で優劣に区別し,それぞれ異なる教育をする,いわゆる差別的を教育というように誤解されかねない。そこで今回の改訂では従来使用されていなかった「習熟度別」という用語を用いた」。
確かに能力を固定的にとらえ,大学進学と関連して成績上位者のみを伸ばし,落ちこぼれは切り捨ててゆくというやり方が「能力別学習」という言葉の中には感じとられる。この反省に立って生徒の能力を動的にとらえ,生徒の努力次第で向上する余地のある涜動的を知識や技能の習得・理解・熟練の程度として形成的,発展的にとらえようというのが習熟度別学習である。
(3)習熟度別学習実施上の留意事項としては次のようなことが考えられる。ア.関係者の共通理解を得ることに努め,ひとりひとりの生徒の自己の学習習熟の程度をより高めようとする意欲を育てる。
イ.教師の一方的な割り振りなをく,自分の判断によって主体的に生徒に学級を選ばせるような指導をする。
ウ.的確に学力を把捉する方法を工夫し,日常の学習状況を観察することにより,個々の生徒の学習習熟の程度や学習意欲等を把握するとともに,生徒に対しては,教科・科目の担任,ホームルーム担任,学年主任等を通して,その趣旨やねらいについて十分を理解を図り,必要によっては個別指導を加えるなどの配慮をする。
エ.父兄の理解協力が得られるよう,事前の配慮を要する。
オ.生徒の努力により学習習熟度が高まった場合など,その程度に応じた学級に編入できるように,学期ごと,学年ごと等において学級の編成替えをする。
カ.習熟度の低い学級においては,生徒の習熟度の高まりや意識の変化に対して常に適切な評価を続け,これを指導の上に生かしていく。(2)どのようにして習熟度別学習を本校に導入し たらよいか。
1 本校における習熟度別学習
ア.概略
○昭和53年4月 数学科で2年生次より習熟度別学習を実施する。 ○昭和53年9月 第1回中間報告を出す。 ○昭和54年2月 第2回中間報告を出す ○昭和54年7月 最終報告を出す。 ○昭和55年4月 英語科も2年次で 習熟度別学級編成を実施する。 ○昭和56年4月 2年生次で文系(3クラス)で英語を,理系(3クラス)で数学の習熟度別学級編成を実施する。
イ.数学科の報告書より
入学以来1年間の数学Iの学習において〔資料1〕のように習熟度の差が予想以上に大きくなり,このままでは上位者は頭打ち,不振者は落ちこぼれになりかねないとの判断から「コース別クラス編成」の実施にふみきった。