福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -007/038page

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〔表4〕読みの速さの指導事例

手ぶくろを買いに(光村3年)

ねらい 1分間に250字位の音読の速さの感覚をもつようにする。
内 容
 1 「手ぶくろを買いに」P54−55の約500字を各自音読する。
 2 速く読みすぎるA児(1分間400字)のテープを聞き,読み方について話し合う。
 (速さ.句読点,間など)
 3 基準に近いB児(1分間に250字)のテープを聞き,みんなで話し合う。
 4 A,B児のテープを二台のカセットを使って,同時にスタートさせ,比べながら聞いて話し合う。
 5 各自1分間250字位をめあてに音読の練習をする。
 6 B児のテープといっしょに音読の練習をする。

 児童が音読・朗読をする時,「句読点」に注意させることだけで,読みがしまってくるし,読む速さもちがってくる。
 展開の過程で,例えば〔表5〕のような記号の約束をして, 教科書に書きこませ,注意して読むように指導するのも一つの方法である。

例

5 音読・朗読の指導上の留意点

 学習指導要領における音読・朗読の指導の系統をみると,1年〜3年までに,正確に音読することをねらっており(3年で完成),4年から味わい伝える朗読をねらっている(4年は音読から朗読への移行の時期),5〜6年は,その完成と考えることができるようだ。
(1)正確に読む(1〜3年)
 音読・朗読による表現は前述したように,単なる技術的な問題ではなく,読み取った内容やイメージをどう受けとめているかの表現である。しかし,下学年の場合は,拾い読みや読み誤り,脱落・発音・アクセント・語や文として読む,区切って読む,声の大きさ,読む速さなど,正確に読むことが中心となる。これは,一見すると,技術的なもののように思われるが,文章の内容を読み取るための基本と考えて指導することが大切である。
 正確に音読するということは「ロをよく動かして区切ってすらすら読む」ことである。区切ってということは,意味のまとまりで区切ることであり,すらすらとは,速くではなく,意味がわかってということである。音読の教材を選ぶには
 1 文字抵抗の少ないもの
 2 むずかしい語句などのないもの
 3 調子のよい.リズム感のある文章
などが選定の基準となる。
(2)味わい、伝えるために読む(4〜6年)
 味わい深く朗読させるためには次のことが大事である。
 1 作品の主題を考える。
 2 作品全体に流れる情感をとらえる。
 3 場面の情景を豊かに想像する。
 4 人物の心の動きや性格をとらえる。
 そのために読解指導の過程で把握させておかなければならない事柄としては次の4つが考えられる。
 1 教材の表現の特色
 2 叙述や描写のすぐれているところ
 3 会話と地の文との関係(修飾語や比ゆの表現名詞止め,倒置法など)
 4 センテンスの長さ
 教材を選定する基準としては
 1 朗読そのものを単元とした教材
 2 情景や描写が適している教材
 3 会話と地の文が適している教材
 4 人柄の叙述が適している教材 などである。

6 おわりに
 わかりやすく明晰な発音で,みんなに聞える音量で,読む速さに気をつけて音読・朗読させることはたんに技能の向上だけでなく,内容を豊かに読み取る上からも大きな意義がある。なぜならば,それは常に作者の意図を尊重し,聞き手の反応をみたり,自己の鑑賞を大切にすることから生まれるものだからである。
<参考文献>
・学習指導要領並びに指導書   文部省

・図説小学校国語科の基本用語   瀬川栄志著小学館

・音読.朗読指導の実際   北村季夫編 新光閣書店

・学校放送テキスト   日本放送協会編


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