福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -008/038page

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生 徒 指 導

児童・生徒理解の現状と課題

経営研究部  松 本 喜 男

はじめに
 生徒指導の究極のねらいは,あらゆる教育の場や機会を通して,児童生徒一人一人の人格を最も望ましい方向に完成させるための援助と指導にあるといわれている。そのねらいを実現するために,児童生徒を正しく理解することが欠くことのできない条件といえる。そこで,当教育センターの研修者を対象に行った生徒理解についてのアンケートの結果をもとに考察を加えていきたい。

1.児童・生徒(以下生徒)理解への取り組み状況
(1) 努力目標の設定
 努力目標等に生徒理解を設定しているのは,小学校80.0%,中学校93.3%,高等学校68.5% と全体で78.5%になっている。これは,生徒指導の充実を図るためには,生徒理解が欠かせないという受けとめ方の現れであると見ることができよう。
(2)生徒理解の計画的な取り組み

表1.
    
項     目 小学校N=60 中学校N=30 高等学枚N=54 全体N=144
計画ができている 35.0% 83.0% 69.0% 58.0%
計画ができていない 65.0 17.0 31.0 42.0

1(丸囲み)計面はできていない理由の内訳
項   目 小学校 中学佼 高等学佼 全 体
学級担任に一任 43/65 17/17 28/31 32/42
時間的ゆとりがない 10/65   3/31 5/42
必要ないから 12/65       5/42
         

 生徒理解を努力目標に掲げていても,年間計画の中に位置づけているのは全体で58.0%計画なしが42.0%であり目標があっても実践への具体策に乏しい傾向がでている。計画性のない理由として,「学級担任に一任している」が全体で32.0%であり,担任の姿勢に期待するものが大きいことを示している。
(3)生徒理解にたった指導の意識と実践状況
 表2にも示すように,大部分の先生が生徒指導は,生徒を十分理解することが大切であると意識している。しかし,表3によると約66.0%が児童生徒との触れ合いが「実際はむずかしい」と感じており,意識と実践に大きな差のあることがわかる。

表2.
項      目 小学校N=60 中学校N=30 高等学校N=54 全体N=144
理解が大変大切である 83.3% 76.7% 64.8% 75.0%
理解が大切である。 16.7 23.3 35.2 25.0

表3.
     
項     目 小学校N=60 中学校N=30 高等学校N=54 全体N=144
触れ合いにつとめている 40.0% 26.7% 31.5% 34.1%
実態はむずかしい 60.0 73.3 68.5 65.9

(4)生徒理解についての意識(順位)
表4.
項     目 小学校 中学校 高等学校
教師と生徒の触れ合い 1位 1位 1位
教師の観察 2〃 3〃 2〃
他教師の情報 3〃 5〃 4〃
教育相談 4〃 2〃 3〃
諸検査 5〃 4〃 5〃

 理解を図る方法として,触れ合いからの重視していることは望ましい傾向といえよう。
 反面,客観的理解を図る方法としての諸検査が低順位にあることは,今後検討を要するところであろう。ところで,検査自体のもつ限界,つまり信頼性や妥当性の限界に注意することも必要であるともいわれている。
 適正な生徒理解を行うためには,一般に教師自身が偏見などの主観を離れた態度をもって,生徒を理解するように努めることが大切である。したがって,諸検査によって得た資料が十分活用されることが必要であろう。更に,教師とし考えるべきことの一つとして,自分の生徒理解が本当に正しいものであるかどうかを,常に自問してみる態度を忘れてはならないということである。


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