福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -009/038page
(5)理解のための諸検査の実施状況(複数回答)
表5
項 目 小学校N=60 中学校N=30 高等学校N=54 全体N=144 知 能 検 査 53 校 28 校 37 校 118 校 学 力 検 査 40 24 33 97 職業適性検査 0 21 43 64 クレペリン検査 0 0 21 21 自己診断テスト 5 4 6 15 向性性格検査 0 6 9 15 諸検査が生徒理解を図る方法として大切であるが,この資料から考察できることは,学習指導に関する検査に比重がおかれ,生徒指導に関する検査が不十分であるということである。
(6) 資料の整理と保管の状況
表6
項 目 小学校N=60 中学校N=30 高等学校N=54 全体N=144 個人ごとに整理されている 58.3% 26.7% 25.9% 39.6% ほぼ整理されている 28.3 63.3 27.8 35.4 整理されていない 13.4 10.0 46.3 25.0 資料は学級担任保管 73.3 73.3 87.0 78.5 〃学年主任 1.7 6.7 0 2.1 〃生徒指導部 23.3 13.3 11.1 16.7 〃全職員の見やすい所 1.7 6.7 1.9 2.7 資料が指導のなかに生かされ,その効果を高めるためには,学級担任はもとより,教科を担当する教師や他の教師が容易に活用できるように整理保管されなければならない。しかし,整理されているのは75.0%である。更に,資料の保管は78.5%が学級担任であり,全教師の見やすい位置への保管は,わずかに2.7%である。このことから,資料の整理と保管に改善を加えたい。
(7) 理解の結果の活用状況
表7.
項 目 小学校N=60 中学佼N=30 高等学校N=54 全体N=144 1.教科指導のなかで
・生かされている41.7% 43.3% 35.2% 39.6% ・生かされている 58.3 56.7 64.8 60.4 2.特別活動の中で
・生かされている45.0 30.0 35.2 38.2 ・生かされていない 55.0 70.0 64.8 61.8 3. 生徒指導の中で
・生かされている46.7 36.7 33.3 39.6 ・生かされていない 53.3 63.3 66.7 60.4 理解の結果をそれぞれの領域でどう生かすかが最も大切な問題といえる。この資料から指摘されることは,いずれの領域でもさはど生かされていないという結果に注目したい。得られた資料を解釈して,個々の指導にどのように役立てるかがきわめて大切であるといえる。
2 当面する課題と留意点
調査結果からも明らかなように,総体的にみると生徒理解の必要性を意識しながらも,実際の活動に結びつかないところに問題があろう。
特に,生徒との触れ合いの乏しさ,理解の結果の未活用などが問題として上げられよう。
そこで生徒理解の本質や目的を確認することが重要であり,そのためには次のようなことに留意することが大切であろう。
児童,生徒理解の本質をふまえる。 生徒理解の方法は種々考えられるが,何よりも優先して「教師と生徒の心のかよいあい」が中心といえよう。理論や形式にだけ固執しての冷ややかな理解では,指導や援助は成立しないであろう。
このような理解の考え方にたって,学校での実践をみなおすことが大切である。 児童,生徒理解の目的を明確にする。 究極の生徒理解は個人の理解であり,その結果が実践を通して指導に役立つものでなければならない。
理解することによって,指導と援助の方向を多角的観点から検討し,生徒のどこを伸ばし,どこを改善するかの見通しがたてられたときに理解できたといえよう。 生徒はすべて個性的存在であるという観点から,得られた資料が各領域で生かされなければならない。おわりに
参考文献 生徒指導の手引 (文部省)
近年,生徒指導上の問題の要因として,教師と生徒の触れ合いの希薄さが指摘されている。例えば,本年6月の教育モニター報告書では,校内暴力誘発の主たる要因として,「教師と生徒との間の対話や心の触れ合いが乏しく,尊敬と信頼に基づく人間関係が育てられていない」ことを指摘している。
このことから,適正な生徒指導を推進するためには,各学校での現在の取り組みに更に改善を加え,望ましい生徒理解に努力されることが課題であると考えられる。