福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -010/038page
教 育 相 談
教育相談におけるロール・プレイングの利用について
教育相談部 小 川 兼太郎
1.はじめに
1921年に,ジャコブ・モレノ博士が「サイコ・ドラマ(心理劇)」をウィーンで初めて公開した。
日本には1950年に紹介されてのち,教育や企業,あるいは臨床施設に取り入れられ発展してきた。
当教育相談部でも研究をすすめており成果を教育相談講座にも利用している。
その一部を紹介したい。2.ロール・プレイングとは
モレノ博士は「役割行動の修正・変容を目的とした学習過程」としての心理劇を体系化したが,その背景となった中心概念は「自発性・創造性」である。自発性とは,さまざまな状況に即応して適切な行為を遂行する力である。自発的な役割演技(ロール・プレイング)は創造的な人間関係をつくる。自発性が阻害されると情緒的障害や社会病理的現象が生じてくる。従って役割を演ずることによって人々の自発性・創造性の回復を企画したのである。
(1) 心理劇における, 役割について略記すると次の通りである。
監督・・・・・・演出家,治療者,分析者の3つの機能をもつといわれるが,外林氏によると「監督のもっとも大きな役目は,患者のもっている問題を発見し,その問題を主題にして自発的な劇をやらせることにある」としている。
・補助自我・・・・・・演者の相手役であり,演者をリードして劇をすすめ,監督の助手の役割をつとめると同時に,患者の助手にもなるという二重の機能をもっている。
・演者・・・・・・問題を解決したい患者が主役となって演じる。
演者自身の日常生活で演じている習慣化した役割行動を明らかにし(図1)次にそれまで演じることのなかった役割を即興的に演じるようにしむけるならば,演者の役割行動は変容し,新たな生き方が発見されるであろうという仮説がでてくる。・観客・・・・・・観客は舞台の患者にとっては,共感者であると同時に,批評者であり,世論としての意味を持つ。また,観客の存在はドラマであることを限定させる保証作用を持つ。
・舞台・・・・・・演者にとって,そこが現実の空間であることを認識させ,内的心理世界に入りやすくするためのものである。(2)次に下表のような過程で実施される。
「心理劇の理論と技術」参照
役割行動の変容課程
監 督 演 者 (A) ウォーミング・アップ 1 役割表現の練習
2 生活再現の過程(B)主題の設定 3 矛盾発見の過程
4 役割明確化の過程(C)主題の追求 5 役割実現の過程
6 役割定着の過程(3) 心理劇の主な技法として 1 役割交換法 2 鏡映法 3 二重自我法 4 空想生活劇法等があるが紙面の関係で略す。
3.ロール・プレイングの利用例
万引きをした生徒に対するかかわり方
情景・万引き常習犯で,今回あるデパートで万