福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -026/038page
研究プロジェクト状況報告
学習指導の個別化に関する研究
一個の確かな学習の成立をめざして一 文 責 酒井義浩 三浦光孝
1.はじめに
学習指導に関する今日的な課題の一つに,学習者中心の授業の創造がある。それは,対象とするすべての児童生徒一人一人に目を向けて,個を理解し,個に即した働きかけを行い,一人一人の児童生徒に確かな学習を成立させる,学習指導法開発への要請でもある。 このような要請に応じて,当教育センターでは,昭和55年度から3年計画で下記に示す教科及び研究協力校のもとに,学習指導の個別化に関する研究と取り組んできている。
研究対象教科及び研究協力校
昭和55年度 昭和56年度 昭和57年度 国 語 科
(湯野小学校)図画工作科
(湯野小学校)数 学 科
(福島第三中学校)算 数 科
(瀬上小学校)体 育 科
(瀬上小学校)英 語 科
(岳陽中学校)第1年次は小学校「国語科」と「算数科」の授業を取り上げ,児童一人一人の理解を深め,授業の中に,個に応じた指導をする場と機会を意図的・計画的に設定し,すべての児童に,適切な賞賛や励まし等の“個を認める”働きかけをすることによって学習意欲の向上をねらった研究をまとめた。(紀要第41号)
第2年次は小学校「図画工作科」と「体育科」の授業を通して,前年度の“個を認める”働きかけを更に一歩深めた“個を生かす”ー個の「特性」や「意志」を生かすー働きかけを教科の特質に応じて追究し,一人一人に真の喜びや楽しさ,充実感のある学習の成立を目指した研究をまとめた。(紀要第47号)
第3年次の本年度は,中学校の「数学科」と「英語科」の授業を取り上げ,一人一人の生徒のもつ資質や能力を可能なかぎり伸長・発揮させるねらいをもって,一斉授業の中での“個の確かな学習”の成立を目指す方策について研究を進めている。以下,その内容の一端を紹介する。2.研究の視点
本研究は,これまでの“個を認める”・“個を生かす”研究の成果を踏まえた上で,教科の特質を考え,特に認知面での個の確かな学習の成立を目指しそのための学習指導のあり方を追究しようとするものである。このことについて,学習のめあての捉えさせ方,課題解決での自己のつまずきや到達度の確認のさせ方,個に応じた学習コースの選択のさせ方など,どのようなてだてや働きかけをすればよいかという視点から研究を進めている。
3.研究主頻の解決策
(1)前提条件:生徒一人一人の性格と学力を把握するために,下記の資料を活用する。
・Y−G性格検査 ・徴候観察記録
・前学期の成績 ・事前テスト等
(2)1時間あるいは数時間の学習の中で,形成的評価問題により自己のつまずきや到達度を確認させ,それによって,補充的なコース,標準的なコース,応用・発展的なコースをそれぞれ自己選択させ,生徒の課題に応じた個別指導を配慮する。(分枝型学習)
(3)解決策は次ページの最初に示した通りである4.研究の方法と計画
研究主題の解決策の効果を判定するための方法と計画は次の通りである。
(1)本研究は,プロジェクトチームによる実証研究とし,検証授業を推進するために研究協力校研究協力委員を委嘱している。
プロジェクトチームの構成は次の通りである。
・ 数学班 所員14名,研究協力委員2名
(福島市立福島第三中学校教諭 西坂和司 和光幸男)
・ 英語班 所員13名,研究協力委員3名
(福島市立岳陽中学校教諭 小林昭蔵 橋本倫子 斎藤進一)