福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -033/038page

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アイディア紹介

心身に障害をもつ子のサイコロ遊びによる数の指導

福島県立郡山養護学校教諭(肢体不自由)   渡辺 高嘉

1.実 態
 本校は肢体不自由児のための養護学校である。近年,いわゆる重度重複化,多様化がみられ,肢体不自由のみならず,知的な遅滞を伴う子どももふえてきている。この事例の対象とした子どもたち7名も肢体不自由(脳性まひ6名,筋萎縮症1名)で,知的な遅滞(津守式乳幼児精神発達診断法による発達年齢,1歳段階〜1名,2歳段階〜2名,3歳段階〜3名,4歳段階〜1名),そして言語障害(発語なし〜1名,構音障害〜4名,発語可〜2名)を併せ持っている。なお,自立歩行は全員不可である。

 この子たちは,施設内療養中の重複障害課程を履修する学級に在籍し,生活科を中核とし言語(国語)数量(算数),道徳,特活の内容を総合し編成した統合学習Tと,養護・訓練を中核とし音楽,図工,体育の内容を統合し編成した統合学習Uを展開している。学年は,1年〜1名,2年〜2名,3年〜3名,4年〜1名という混合構成である。

2.計 画
 この事例は,統合学習Tの実践である。年間計画について,主題名と,特に数量に関する分野について記すと次の通りである。
総合学習1の実践例

 これまでに,この学級の子どもたちは,具体物や半具体物によって,1対1の対応づけに,普段の学習の中で数多く取り組んできた。そこで,簡単な数と事物との対応を,さらにそれらに基づいての順番などの数の理解を,遊びの中で体験を重ねるうちに身につけさせようとして,サイコロ遊びによる数の指導の導入を計ったわけである。

 松原(1)によれば,幼児期の数の分野とは次のようなものである。
1 数唱(数を正しい順序で唱える) 2 計数(物と数とを正しく一つずつ対応させて数える) 3 集合数(みんなでいくつあるかが正しくいえる。すなわち,数えおわった最後の数の名前が全部の個数である) 4 多少判断(数の多い少ないがわかる) 5 順序数(前、後、右,左から何番目がいえる) 6 数字の読み書きができる。 7 加減算(和が10以内のたし算,ひかれる数が10以内のひき算ができる)

 そこで,この学級の子どもたち(発達年齢が1〜4歳)にとって,上述のような分野への取り組みは必要であると考え,このサイコロ遊びによって,このような分野の一つ一つの理解,定着,向上を図り,さらに,総括的な取り組みによる伸展をめざした。

3.展 開< br>  さて,指導の実際は,12時間の取り組みであったが,その展開は,次の通りである。
(1) サイコロころがし
 1 出た目はいくつ〜A いち,にい,さん…・と数える(3時間) B.フラッシュカード式にひと目で見取る。(3時間)
 2 あわせていくつ〜2個のサイコロで出た目をあわせて数えたり,見取ったりする。また,出た目の回数を比べる。(3時間)

(2) サイコロ選び
 ころがして出た目の数を見取って,その数の分だけ移動し,数やあがりの順番を理解する。(3時間) ここでは,(2)のサイコロ遊びについて詳細するが (1)の1のAの取り組みでは,集合数(殊に,数えおわった最後の数の名前が全部の個数であること)の指導に,(1)の1のBでは,一目で見取って,指で示させ,さらに数字カードでの確認に,(1)の4では,2つのサイコロの出た目を見取って,あわせた数をいえる指導に,それぞれ力点をおいた。


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