福島県教育センター所報ふくしま No.59(S57/1982.12) -034/038page
さて,(2)のサイコロ遊びの方法は,きわめて簡単である。図1のようなサイコロを使って,ころがし出た目の数の分だけ,図2のように配置した座布団上を数えながら四つ這い移動(障害のためにできない子には,指導者が抱きかかえて)する。そして,あがりの順番を最終的に確認するというものである。
この中で,(1)の1のAやBの内容(ころがして出た目を一目で見取り,その数の分,数える)も,さらには,2個のサイコロを使えば,(1)の2の内容も同時に応用,そして発展することができた。
また,この遊びでは,子どもたちに役割分担(サイコロをころがす役と出た目を見取り移動する役)させることによって,遊び自体の興味.関心意欲が倍加されるとともに,出た目の数の大きさの比較,分類,順序づけするという数概念の促進をもできたといえる。
・とりのこ紙でくるみ,赤 のラシャ紙で円を切りぬ きはりつける。
・箱の中には鈴を2こいれ ころがすと音が出る。※1辺が23pの立方体(2個)
図1.使用したサイコロ4.考 察
この取り組みでは,松原の示唆を受けて,数唱においては,「ひとつ,ふたつ」(やまとことば)式をさけて,「いち,にい」(中国伝来語)式を意識的に取り入れ,数概念の初期的指導における混乱のないように配慮した。また,集合数の理解に困難のある子どもには,機会を多く与え,その認知及び概念の形成に努めさせた。さて,この事例の教材教具は,坂本の指摘にもそったものといえる。それは,次のようなことである。1 発達段階に即し,発達課題に基づくもの。2 興味・関心をひき,てごたえのあるもの。3 子どもが自由に持ち運びし,操作できるもの。4 危険でないもの。5 成功感や効力感や自信を与えるもの。6 自分で誤りを発見できるもの。7 安価で丈夫なもの。8 分析,統合,比較対照などの要素が含まれているもの。
次に,いかに肢体が不自由で,知的な遅滞があっても,からだを動かし,行って理解すること,換言すれば,操作を通して基本的な概念をより確かなものとすることが肝要であるといえる。
5.まとめ
このリポートの実践は,実に些細なものであるが養護学校において,重度重複,そして知的な遅滞の障害を併せ持つ子どもに,健常児が,普段の遊びで経験を重ねる中で当然身につける数活動,ひいては数概念に,いかにして,より近づけ,より確かなものとするか。そのために,遊びを組織し,数的内容を実践の場にコンパクト化して持ち込むことが重要である。そして,個の障害状況や能力特性をよく見つめ,個を生かすように配慮しながら,中味や手段を工夫することである。つまり,縦の道筋と横のふくらみへの考慮が,現場での実践上のポイントであるといえる。<参考文献>
(1) 松原達哉:幼児の数の指導,日本文化科学社
1979年
(2) 坂本 茂:構成された自由空間,筑波大学附属
桐ヶ丘養護学校研究紀要第17巻,昭和56年