福島県教育センター所報ふくしま No.75(S61/1986.2) -002/038page
中・高教材 運動の特性に触れさせる集団的スポーツの指導
ーバレーボールの指導を例にー教科教育部 丹 治 光 雄
1.はじめに集団的スポーツは,集団と集団の間で,ポールの取り扱いをめぐってゲームを行う運動であるので,生徒は非常に意欲的に取り組もうとする。 しかし,今までの授業を振り返ってみると,教師はチャンピオンスポーツにおけるゲームを想定して指導してきたため,技能の優れた一部の生徒だけが中心的に活動し,技能の劣った生徒は,ただ「参加するのみ」という状況が多く見られた。 そこで,どの生徒も運動の特性に触れる楽しさを味わい,運動欲求を満たすことのできるような集団的スポーツの指導の在り方についてバレーボールを例に述べてみたい。
2.学習過程の改善(1)従来の学習過程
これまでの集団的スポーツにおける一般的な学習過程は,教師によってその運動を構成している技能が分析された後,「基本技能−応用技能−ゲーム」の経過をとることが多かった。
図1において「Cが習得されなければBは成立しないし,当然,期待するAは展開できない」という理由から,教師は,ゲームはさておき,それぞれの個人技能の指導に,より多くの時間とエネルギ―をかけてきたのである。 しかし,この技能中心の指導も,限られた時数の中では期待したほど技能が改善されないので,すべての生徒に運動の特性に触れさせて満足感を与えることはできなかった。
(2)運動の特性に触れる学習過程
中学校指導書・保健体育編(文部省)には,「集団的スポーツにおける技能の指導は個々に学習させるよりも,まとまった内容として学習させることが大切である」と示してあることからすると,指導の中心的内容は,ゲームや集団技能であるということができる。 そのための学習過程について考えてみよう。
図2の考え方が「どの生徒も,特性に触れる楽しさを味わうことができるので,その運動が好きになって意欲が高まり,より高いレベルでの学習を追求しようとする過程」であるということができる。