福島県教育センター所報ふくしま No.75(S61/1986.2) -007/038page

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図5 測定 ◎ 測定
 滑車を通しておもりをっるした円板をつけた円筒を静かに手で引き上げ,円板が離れた瞬間の深さを,円筒にはりつけたビニールテープの目盛で読む。おもりを順次変えて,それぞれ円板が離れたときの深さを測る。ワセリンはその都度塗るとよい。
次の表は,測定結果の一例である。
円筒の断面積 102cu
おもりの重さ [g重] 100 200 300 400 500 600
円盤が離れた深さ
[cm]
1.2 2.2 3.0 4.0 4.8 6.0
水の圧力
[g重/cu]
1.0 2.0 2.9 3.9 4.9 5.9

6.装置雑感

 この装置は,ばねの伸びとおもりの重さとの関係を調べる方法と同じようにして,水の深さとおもりの重さとの関係を調べることができ,思考の飛躍がない。おもりをばねで引いているかわりに水で押し上げているという感じがつかめるのではないかと思われる。
 さらに,円板は,糸から1点を下向きに引かれ水から面全体を上向きに押されていることから,点に働く力と面に働く力の違いを認識させ,単位面積当たりにはたらく力(圧力)の概念が必要になることに気付くこともできよう。
 つまり,圧力についての学習は,このように面にはたらく力を知ってからのほうがよいのではないかと考えるがいかがなものであろうか。
 この装置の欠点の一つは.水槽の数がたくさんないと生徒実験ができないことである。数をそろえるのは予算の関係もあり以外に難しいものである。この実験で用いた大きさの水槽でも,市販のものは割合安く手に入り,上の内側に枠がついているので,戸車固定の木の枠を止めるのに便利である。もう一つの欠点は,糸が戸車からはずれたり抜けたりしたとき,水中に手を入れて直さなければならないことである。ストッパーなどを考えてみたがうまくゆかなかった。
 演示用として用いる場合は.水槽も円筒も大きい方がよいが,円筒の大きさは,この実験に用いた直径11.4cmのものまでで十分であろう。これより大きいと接面を平らにすることが難しくなり,円板にもゆがみが生じ易くなるからである。
 なおこの装置は,木片などのように,水に浮いてしまう物体が水中で受ける浮力の大きさを容易に測定できるので試みていただきたい。

7.おわりに

 力のはたらきの学習の中の圧力に関する部分を例として,できるだけ簡単な原理の装置で力のつりあいから段階的に圧力の学習に連続して入るために製作したものである。円板におもりを乗せるかわりに,下から引いただけであるが,思考の流れは単純になり説明し易くなるものと思う。
 力の大きさは,おもりを用いて引いているので誰にでもわかり,円板が水を押している力が存在することが間接的に納得でき.圧力の考え方に到達できる。
 このように,装置を単純なものだけで作れば,物体がどのような力を何から受けているかを認識するのが容易になろう。そのことが将来の「運動と仕事」の学習に,さらには高校理科1における「力学」の学習へと発展的につながって行けばと願うものである。

<参考文載>
・新しい科学(1分野上)     東京書籍


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