福島県教育センター所報ふくしま No.75(S61/1986.2) -012/038page
童生徒の考え方や行動で理解しにくいことがあるかという問に対する回答結果と.前述の教師のとらえた児童生徒からの信頼度との関連をみたものである。小・中・高等学校のいずれもが,児童生徒からの信頼度が高まるにつれ,児童生徒の考え方や行動で理解しにくいことの頻度が下がる傾向を示し,信頼度と生徒を理解することが密接に関係していることを示している。しかも,この関連は,高・中・小の順に強くなり,児童生徒の考え方や行動をよく理解していると回答している教師ほど,児童生徒から信頼されている傾向がみられる。
図3は,児童生徒の社会性を育成するために,人間関係にどの程度配慮して授業を行っているかという問いに対し,よく配慮していると回答した割合と児童生徒からの信頼度との相関をみたものである。
信頼度がほとんどない場合以外は,信頼度が高いと思っている教師ほど,授業に際し人間関係をよく配慮しているという回答が多く相関が高い。しかもこの相関は,高・中・小の順に高くなっている点で図2の場合と同様である。
図2,3はいずれも,生徒指導の機能を生かして生徒理解を深め,人間関係に十分配慮した授業を展開することがいかに重要なことであるかを示唆するものである。なお,本県の結果は標本数が少ないため,ややばらつきはあったが,いずれもこの全国調査の結果とほぼ同様であった。 これまで述べてきたことは,教師から児童生徒をみた場合の人間関係である。これと逆にみた場合を次の項で述べてみよう。
3,児童生徒からみた教師との人間関係図4は,学級担任をキャリア別に教職三年末満の新人,三十代の中堅,四十代のベテランに分け児童生徒に評価を求めた結果にデータを補足し,一般化した形でまとめたものである。(「孤立化する子どもたち」深谷昌志 NHKブックスより)
この図によると,若い教師は,児童生徒との年齢差が少く,比較的接する機会や時間をもち.教え方は上手とはいえないが(y2),人間関係が円滑なので(y1),評価は悪くない。教職年数が増すにつれ,教育技術が向上(y2)するとともに,人間関係も円滑な状態にあるので,教師としての黄金時代を迎える。しかし,更に年齢が上るにつれ,触れ合いの機会が減るので(y1),教育枝術は向上するが(y2),評価は低下する。
すなわち,教職年数が長くなるにつれ,教育技術の充実と反比例する形で,子供の心がつかめなくなるあたりに問題があると思われる。
4.おわりに人間関係の改善や促進は,無条件に実現するものではなく,教師の努力に負うところが大きいことをふまえ,常日ごろから望ましい人間関係を確立しておくことが,生徒指導の大前提と思われる。