福島県教育センター所報ふくしま No.75(S61/1986.2) -025/038page

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(ア)ねらい
   ○不適応生徒の事例や指導の経過等について全職員で検討し、生徒指導についての共通理解を図るとともに、今後の指導方針や指導方法の工夫と改善につとめる。
   ○教育観や指導観についての相互理解深め、全職員が同一歩調で指導ができるようにする。
(イ)手順

事例研究会の推進

(ウ)事例概略

  ア 問題の概要
    自分の殻に閉じこもり、明るくはなすことがない。身体の不調を気にして悩み、よく頭痛を訴える。友人との協調性に欠け、一人で行動することが多い。性格はおとなしく、内向的、STEP調査には「自己違和感、不安感、自己否定感、家庭や学級不適応感が強い」という結果があらわれていた。
  イ 指導の経過
    学級担任を中心に集団生活での個人のあり方(社会性や協力性)について、意図的・継続的に指導、学級内では、座席の位置に配慮、一方、リーダーの生徒に対して協力を求めた。母親を交えた三者面談では、特に健康管理に留意させ、日常生活を明るく、楽しく送ることの大切さについて助言を与えた。
  ウ その後の変容
    2年生でのクラス替えを機会に本人も心機一転、さらに学級旗作成委員に選ばれ、自分の得意な絵画の描写力を発揮できたことなどから、学級内でも自身と意欲をもって行動するようになった。このことは、次回のSTEP調査にもあらわれていて、1年時とくらべてすべての面で著しい変容が認められた。

5.研究の成果

(1)生徒活動研究部
 1 諸詰活動を通して各人みなリーダーでありフォロアーであるという意識が定着してきた。
 2 計画のたて方・活動の進め方にも慣れ,教師の指示がなくても自主的に活動することができるようになってきている。学級での話し合いも活発になり活気と行動力のある学級作りが進められている。
 3 共に活動することによって有形・無形のものを生み出し,喜びを共有することによって一体感が深まるということが確認された。

(2)学業指導研究部
 1「学習のすすめかた」についての評価・集計問題点の話し合いが生徒自身の手で行われたため「学習のすすめかた」についての意識が高まった。
 2「学習の計画と記録」を通して.生徒の家庭生活や家庭学習にかかわる諸問題をとらえることができ,生徒個々の生活や学習の援助指導の改善をはかることができた。
 3「学習のすすめかた」「学習の計画と記録」の研究実践を通して教師相互の共通理解が深められ「ふれあい」を大切にする意識が高まって生活・学習の両面から向上がみられた。

(3)教育相談研究部
 1 校内研修や事例研究会での話し合いを通して相談活動の過程や基礎的技術の理解が得られ共通の姿勢での相談活動が可能になった。
 2 このことは,教師側の取りくみにもあらわれ,「決められているからやる教育相談から生徒理解や援助指導に必要だからやる教育相談へ」と質的変化が認められる。
 3 少しずつ生徒側にも変化が見られ,すすんで教師に話しかけたり,問題解決を依頼してくる生徒も増えてきている。

6.今後の課題

 これまでの2年にみたない実践・研究は,研修のための時間の確保・主題についての共通理解,各研究部門の連携及び研究の焦点化など多くの課題をかかえながらの模索であったように思う。 ささやかな成果は確認することができたが,残された課題も多い。

(1)オアシス活動については,ねらい・時間・係生徒の負担などの観点から,内容や種目を思いきって精選し,さらに活動のための準備の時間の確保を考慮する。
(2)学級会活動や短学活の充実とともに,司会者の重要性が浮きぼりになってきた。司会のしかた,話し合いの深めかたなど,場に即した具体的な指導が必要である。
(3)「学習の計画と記録」を縦続できない生徒の指導については,教育相談などそれに代わり得る 「ふれあい」の機会を積極的に求めていかなければならない。
(4)社会や親,教師への不信感をもつ生徒に対して,教師との信頼関係を高めながら自己理解をどう深めていけばよいか。
 こうみてくると,むしろ多くの課題をかかえた実践研究であったというのが実感である。


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