福島県教育センター所報ふくしま No.75(S61/1986.2) -031/038page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

アイディア紹介

手作りの教材と個別指導

県立岩瀬農業高等学校教諭
石川 恪治



1.はじめに
 本校に入学してくる生徒についてよくいわれることは,学習する意欲の低い生徒が増加している傾向にあるということである。しかし,生徒たちと接していく中で感じることは,決して意欲が低いのではなく,今までに,自分自身が中心となって企画したり,活躍したりした経験がほとんどないことが多いため,高校の生活に対しても不安や自信のなさが優先してしまい,消極的になってしまうと考えられる。こうしたことに対し,私が常々思っていることは,生徒自身に活動の場(テーマ)を与えてやり,その中で一人一人が活動できるようにすることである。ひとたび,成就感を味わった生徒は,自信がつくと同時に,興味・関心が喚起され,学習意欲の向上につながることが多い。以下,私の担当する食品加工において実践していることの一端を述べることとする。

2.実践
(1)家庭での実験実習
 食品加工に関する専門科目の学習内容は,多岐にわたっている。しかしながら,その学習内容が常に食品や食品製造とどのようにかかわり合い,どのように役立っているのかを明確にしていかないと,教室だけの学習に終わってしまう。当然,学校における実験・実習も可能な限り行い,専門教育の充実を図っている。このような学校での学習に加え,食品への興味・関心を喚起させるため一人一人家庭で実験・実習させている。どの家庭にも,砂糖,食塩,油,食酢,化学調味料などは必ずあるし,ガス,水,鍋もそろっているので,いろいろな実験・実習を工夫していくことができる。項目ごとに実験・実習力一ドを作成し.手順は図を多くしてわかりやすくし,その中で必ず,学習した項目を確認させたり,これから学習することを調べさせたりするようにしている。

1 指導内容を検証させる実験・実習
ア、ビタミンCの働き(1年,食品製造)
 リンゴの皮をむき.一方は表面に水を塗り,他方にはレモンの汁を塗っておき,時間経過に伴う色め変化をカードに記録させる。ビタミンCの還元剤としての働きを確認させるとともに,リンゴ果汁製造などにどタミンCが利用されている理由を理解させる。

イ、アミノカルポニル反応(2年食品化学)
 砂糖の水溶液と同じ濃度にした砂糖の水溶液にグルタミン酸ナトリウムを加えたものを準備する。それを同じ条件で加熱沸騰させて,時間ごとにサンプリングする。同じ時間経過したサンプルを比較することにより,アミノカルポニル反応を確認させる。みそやしょう油の色はこの反応によるものであり,食品製造と非常に関連のある重要な反応であることを認識させる。

2 長期休業中における課題学習
 身近な食品の加工についての実験・実習カードを数種類用意し.綴りとして食品加工料の全生徒に配布する。最低一つは実践してみることとし,結果をレポートにして提出させる。(1)の実験・実習と同様,単に作るだけでなく,同時に関連する事項をスムーズに学習できるよう心掛けている。今年度,冬季休業中のために配布したカードの綴りについて紹介する。5つの食品の加工にづいてまとめたものである。
ア、雪を使ってアイスクリームを作ろう。
 乳化剤(レシチン),乳化型.乳化食品などについての学習もさせる。
イ、甘酒を作ろう。(市坂のこうじ使用)
 こうじ菌の働き,アミラーゼの働き,なぜ甘くなるのかなど学習させる。
ウ、キャラメルを作ろう
 キャラメルの色について,原料の配合と品質の関係など学習させる。
エ、カルメ焼きを作ってみよう

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。