福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -005/038page

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所員個人研究 _(小学校社会)

個の追究特性に応じた杜会科の授業

学習指導部 吉 田 尚


 1.はじめに

  新教育課程の基本方針として,4本柱が示されている。その一つに「国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し, 個性を生かす教育の充実 を図ること」があげられている。

 「個性を生かす教育」の中に,個人差に応じた教育の必要性の指摘が認められ,これからの教育の重要な方針として強調されている。

 また,この「個性を生かす教育」は,個性を発揮させ,社会生活が営めるようにすること,共通の達成目標に対して到達させ,共通の基礎的・基本的な内容を身につけさせること,児童に自らの能力,適性に気づかせ,自らの特性を生かす方法を身につけさせること等を求めていると考えられる。

 さて,社会科にとっても個性を生かすことは重要な課題である。社会科が目指す知識・理解,能力,態度をセットにし,個性的で主体的な社会認識の育成を考えるとき,児童一人一人の個性的なものを大切にすることは,まさに教科の本質に関わる重要なこととしてとらえなければならない。

 これらのことをふまえ,社会科学習指導において,児童一人一人の個性を生かし,主体的に学習に取り組ませるための指導の在り方について一考察を加えてみたい。

 2.個性を生かす社会科学習指導の中核となる考え方

 (1)社会科における「個性」についての考え方これまでの社会科学習指導の研究においては,学習対象としての社会的事象・事実をいかに具体化するか,そのために教材内容・構成の在り方をいかにするかという点で,大きな成果を納めてきた。しかし,学習の主体である子どもの追究の仕方に焦点をあて、子どもの追究の仕方の多様性に応じた学習指導の在り方を探る研究は希薄であったように思われる。

 学習に取り組む子どもたちを見つめてみると,極めて個性的存在であり,その追究の仕方も決して一様でないことに気がつく。この追究の仕方の多様性,即ちその子どもなりの見方・考え方に視点をあて,それに対応する学習過程を組織することは,一人一人の子どもが真に個性的に社会生活の意味を追究し,より価値の高い見方・考え方を獲得するためにも意義のあることと考える。

 (2)社会科における個の追究の特性を生かすこと子どもの見方・考え方は,極めて個性的であり一様でないことは先に述べた通りである。特会認識の個性的定着を求める社会科にあっては,子ども一人一人の追究の仕方も固定的,画一的にとらえるべきではないと考える。

 つまり,社会を認識していく過程でのものの見方・考え方を中心にすえ,問題解決のある場面に顕著に表れるその子なりの特性を生かすという視点を持つことが,大切ではないかと考えるのである。

 そこで,子どもたちが課題をとらえ,課題を解決していく過程の中で,まず最初に個々のものの見方・考え方が要求される場としての「社会的事象・事実との出会いにより問題を持つ活動」から,児童個々の追究の特性をとらえ,その特性をよりよく生かす学習指導の在り方を工夫することを考えたわけである。

 3.個性を生かす社会科学習指導の構想

 社会的事象の意味を追究する際の子どもの特性に着目して,子ども一人一人の個性の生きる場や学習過程を設定し,個々の子どもが意欲的に課題に取り組みながら社会的事象の意味をより深くとらえさせようとするために次のような学習指導の構想


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