福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -008/038page
所員個人研究 一(中学校数学)
中学校の数学に対する関心・態度と学習スタイル
−学業成績及び『統制の位置』との関係−
科学技術教育部 八 島 喜 一
問題と目的
小学校で算数を学んできている中学生は,数学に対してどのような関心を抱き,どんな勉強法を身につけているのであろうか。
私は,この中には学力の増進を左右する要因を探る上で極めて重要な問題が含まれていると考え以下に示すような2つの仮説を設定し調査研究をした。研究Iでは,数学科に対する関心・態度に関する調査をして「数学科に対して関心が強い者ほど成績が良い」ことを確かめる。研究IIでは,数学科に対する勉強法の調査をして「主体的で実益のある勉強を進めている者ほど成績が良い」ことを確かめる。また,このようなより望ましい態度を身につけていく過程には,失敗したり成功したときの原因を自分のこととする意識が大きくかかわっていることをも確かめる。
問題の背景トビアス(Tobias)は「数学科においては,これまで(1)数学の授業は主に能力的に適している生徒を相手に計画され実施されてきたのではないか(2)数学教材の持っ“一貫性"を過信して,学習者の学び方の多様性を避けてきたのではないか」と指摘しているが,私自身を含め数学科教師は,学習者が安心し楽しく数学を身につけていく教育方法の改善を後回しにしてきてはいないだろうか。こうした傾向になりがちな背景の1つに,数学への興味や関心・態度,勉強の取り組み方や数学的既有経験などに関する実態把握の困難さが考えられる。それに対して,知的能力,場−依存・独立,衝動・熟慮,聴覚・視覚,内向・外向等は性格的にかなり固定的であるため,これらを指標とする研究は早くから手掛けられていた。その中で例えば,ウィトキン(Witkin)の「場一独立型は比較的理数系に適しているから,その逆の傾向の場一依存型に対しては,数学的事実よりも人間的・社会的事象を例に挙げながら教授するとより効果がある」とする研究報告がある。
今,学習者の個性の重視が強調されている。この歴史的背景には,本研究の意図と相通じる内容が含まれている。それは,学習者の『適性』を生かす授業をどう組織すればよいか,ということである。クロンバック(Cronbach)が提唱した適性処遇交互作用(ATI)という考え方(図1)がこの課題の一解答を与えてくれる。だが,人格特性のどれを適性と見るのかについての定説はなく,
市販されている学力関連検査でも,より固定的な特性を中心に扱われているのが現状である。
統制の位置について例えば問題や仕事に取り組むとき,他人に言われてやる場合と自分からやる場合とがある。前者の場合であれば,その仕事は実は自分自身のためのものだという認識を持ち合わせなかったとしたら,大抵は心的苦痛を伴うかうまくいっても別にうれしさをさほど強く感じることはないであろう。しかし,後者の場合にはたとえ失敗してもそれなりの充実感や新たに向上しようとする意欲が得られることが多いものである。こんなときの意識に対してロッター(Rotter)は,成功や失敗の原因