福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -010/038page
成績上位者においては,男子が『ヒラメキ型』であるのに対し女子は『コツコツ型』であると考えられる。成績下位者の場合は,男子が視覚的・演繹的であるのに対して,女子が算術的・帰納的であるという特徴が見られた。
【研究II】数学科に対する勉強法の調査
方法福島大学の河野先生が作成した36項目の定期試験準備行動尺度を生徒の実態に合うよう30項目に改めて(表2)これを用いた(同地区の中学2年生227名を対象に、昭和63年12月に実施)
表2 数学科に対する勉強法(項目の一部) 1 定期試験のための計画を立てた。
3 友達と相談して計画を立てた。
4 教科書を一通り読んだ。
5 教科書の分からないところに印をつけた。
6 教科書の大切なところに下線を引いた。
18 間違えた問題を選んでもう一度解いてみた。
21 友だちと一緒に試験勉強をした。
26 分からないところを先生に質問した。
30 授業中メモをとりながら説明を聞いた。
結果と考察1.学業成績と勉強の仕方との関係
学業成績上位者は授業中の注意力や予習復習の仕方が身についており,学習の進め方も教師からの情報を漏らさずに吸収している。下位者は,自分から主体的には取り組まず問題や課題の表面でのみ終始しており,下線を引いたり印をつけたりすることが即学習行為であると誤認していることなどが明らかになった。また,友だちと一緒に学習することによって自分の不安感を取り除こうとする姿が多かったが,これは数学の学力を高めるよりは依頼心の強化に直結しているようである。
2.学業成績と統制の位置との関係
統制の位置を NS(33)Scale(注2) で測定し,学業成績との関係を調べた。その結果,男子の場合には成績上位群の方が成績下位群よりも統制の位置得点が低かった(図3)。すなわち,より内的化しているということである。これに対して女子の場合にはその差は見られなかった。これは,男子の場合には,自己責任性が強いタイプ(内的・図3成績の違いにおける統制の位置得点統制型)と他人への転嫁傾向が強いタイプ(外的統制型)とに大きく分かれる特質があるのだが,女子の場合には,日々の行為を自分の責任において処理しているという意識が男子よりもより強く働いているためであるらしく,女子の方が男子よりもすでに統制の位置が固定化しつつある表れとも解釈できる。
結論数学を勉強していて「解かなければ答えが分からないところが好きだ。」とか「分かりそうで分からない問題をよく考えて解けたときが最高。」という生徒の声がある。また,『統制の位置』の結果から,問題を自分のものにしている生徒ほど成績が良くより深い充足感を感得していることが明らかになった。従って,生徒の適性の諸特性を十分に把握し,失敗場面では本人にその原因を直視させつつ,「できた」「頑張ってよかった」という成功経験をより多く獲得できる授業改善の工夫が大切であると思う。
引用文献
河野義章 1987 内的統制・外的統制と中学生の試験
準備行動. 日心第51回, 808.
八島喜一 1984 児童・生徒のLocusofControl
に関する研究(1),(2).日教心第26回,人格440.
注1 成績上位者 数学科の評定が4と5の生徒
成績下位者 数学科の評定が2と1の生徒
注2 NS(33)Scale ノヴィッキとストリックランド(Nowicki&Strickland)が児童用として開発した統制の位置測定尺度を八島が標準化したもの。