福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -012/038page

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・生徒の実態に合った学習内容を取り扱う。
・相対評価ではなく,個人の伸び,特性を評価する。
・生徒に,能力に応じた質問をし,どんな方法を使っても指名した生徒から答を導きだし,それを評価する。
・高い能力を持ち,授業に満足していない生徒,授業について来れない生徒の双方に,それぞれの達成目標を設定し,個別に課題を与えての指導,学習の習慣を確立させるためにも継続的な指導が必要(授業外での指導)。
・前回の中間考査において,部分的に課題を与えた英作文を出題し,型にはまらない発想を重視した。としている。が,やはり生徒を全体的,平均的視点から捉えた一斉画一的授業から抜けきれず,多様な個に応じることの難しい実態がうかがえる。

3.個に応じる意義

一斉指導それ自体は,決して否定されるべきものではなく
・指導上の経済性
・討議指導による思考の深化
・社会性の育成
などのメリットを持っているが,一斉指導のこれらの機能を発揮させるためには,少なくとも次のような条件が必要である。
・学級全員がほぼ同一の理解力を持つ。
・授業の仕方が一方的
・画一的でない。
・生徒の疑問や発想を生かすような展開で行われる。

 しかし,個人差があまりにも大きくなると,一斉指導では対処できなかったり,学習上のつまずきの治療にかえって時間がかかる場合がでてくる、そのような時に,一斉指導に加えて,個に応じる必要が生じる。この一斉画一的な授業を補うものとしての個に応じる指導が,実際の授業の中では可能なのであろうか。

4.個人差の捉え方

 生徒は多様であり,それぞれ個性豊かである。それだけに,その個性を伸ばすたすけをすることができることは,教師の無上のやりがいであるに違いない。そこで,「個に応じる」の「個」とは何かを考えてみる。個人差を,「達成度としての学力差」,「学習速度・学習の仕方の差」,「興味・関心の差」すれば,英語の授業の中で,「個に応じる」ことが可能なのは,言語活動に必要な事項を獲得する過程においてであり,また,言語活動そのものの中でということになる。さらに,「個に応じる」ためには,一斉授業に対し,かなり思い切ったメスを入れ,これまで一様であった学習の目標や内容を,いくつかのレベルに分け,何本建てかにするしかない。例えば,50人のクラスでは50種類のメニューが必要になってくる。しかし,「個性重視」が叫ばれてきた背景をみると,「従来の指導の在り方」が問われているのであり,従来の授業が画一的で,柔軟性に欠けていたことに端を発している。先生方の資料にみられる「意欲の欠如,英語嫌い」等の問題も,その原因は,そこにあるものと思われる。しかし,高等学校において,クラスの一人ひとりのメニューを作り,個に応ずることは不可能に近い。従って,一斉授業の中で個に応ずることを考えなければならない。

5.個を生かす場面

 生徒には,それぞれの学習の仕方,思考の方法,興味・関心などがあり,ここでは,生徒の持つ能力を引き出す場を設定してやることを「個を生かす」と考えていくことにする。例えば,一人ひとりが倒達度に応じて,学習課題が選択できるようにしたり,学習形態をT-T(必ずしもAETとの協同授業を意味しない)にしたり,あるいは,グループ分け(単なる班編成ではなく,個性を尊重したものであることが望ましいし,必ずしも等質でなくてもよい)など授業形態や学習方法に工夫をこらすなど…配慮すべき点はたくさんある。

6.授業の流れ

 学習速度,学習の仕方などの言葉は,高等学校ではほとんど話題にしないし,たとえ聞いたこと


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