福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -013/038page
があるにしても,実際に授業と結びつけて考えることは少ない。一斉授業の中で個に応じるとすれば,個別指導や個人の表現特性に応じたグループ学習などを通して個に柔軟に対応できる授業の展開ということになるであろう。例えば,先生方の意見を参考にしながら授業の流れのモデル作ってみると,
前述の先生方の資料からも分かるように,授業の中で,指名の仕方や発問の工夫などで,個に応じる指導はなされているものの,到達度,興味・関心,学習の仕方などへの配慮は欠けているのが現状である上記のモデルは,グループ学習では学習速度,学習の仕方,表現特性などに応じて学習し,個別学習では,一斉授業やグループ学習での基本学習の後,それぞれの到達度に応じて,補充・発展・進化のための学習を行うものである。なお,このモデルでは,教材内容の精選・工夫により,興味・関心などにも充分に対応できるものと思われる。
7.個に応じるための問題このような授業形態を採ったり,指導法をとることが必ずしも効果があるとは断言できない。生徒の個人差が少なければ一斉指導のほうが有効であるし,机間指導,発問の工夫などでも充分に対応できる。しかも,この方法は,ややもすると,達成度の低い生徒に教師の指導が向きがちである。高い生徒に対する応用的課題など,自主的に学習できる教材も周到に準備されなければならない。さらに,もっと重要なことは,生徒の個に応じるためには,生徒をよく知らなければならないことである。英語学習に対する興味・関心,学習意欲,思考の仕方など,学習にかかわる要因を調べ,生徒の実態を的確に把握しておく必要があるし,授業の中でも,絶えず生徒一人ひとりの反応,発表などの学習活動に注目,観察し,達成度,理解の速度なども知っておくべきであることはいうまでもない。
8.おわりに単なる放課後の個別指導や机間巡視,プリント学習,添削,等だけでは個に応じることはできない。興味・関心に即した教材の工夫・開発,学習特性の差ともいうべき個人差に応じた教材の精選,あるいは,授業形態の工夫,指導法の改善などにより高等学校の段階では難しいと思われている個に応じる指導も見通しは明るいと思われる。問題は,一斉指導の中のどこで,どの形態をとって,どのような指導法を行ったら,この目的を達成できるかということである。しかしながら,一斉指導,個に応じる指導と,いずれの授業形態・指導方法をとろうとも,「学習とは個別に成立するものである」ということを忘れてはいけない。
参考文献
中等教育資料 平成元年4月号
中等教育資料 平成元年6月号
初等教育資料 No.499
初等教育資料 No.525
指導と評価 No.10 No.11 No.12
英語教育 1987 8月号
英語教育 1987 11月号
英語教育 1987 12月号
英語教育 1988 12月号
学習指導研究 1988 1月号