福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -025/038page

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研修者研究報告 一(教育研究法講座)

多面的,多様な考え方を生かし内省化を図る
                  話し合いの指導(道徳)


一パネルディスカッションの活用一

福島市立福島第四中学校   沢 田 昭 子

1.研究の趣旨

(1)研究の動機とねらい
 生徒一人ひとりの心の奥底には,自分を見つめ,よりよく生きようとする願いがある。生徒は道徳的価値については自分なりの考えをもっている場合が多い。授業の中でも資料に取り組む姿勢もでき主人公の生き方に共鳴したり,反発したりなどの反応を示し価値を追求しようとする姿勢は高まりつつある学級集団に目を向けると,今の段階は生徒一人ひとりの発達の個人差が著しいのと同様に,生徒のものの見方考え方が多様性に富んでいる。学級の集団は生徒一人ひとりの個性的な生活態度や生き方への多様な関心が入り交じっている時期である。しかし,このような多面的で多様な考え方を持ち合わせているにもかかわらず,より高い価値に照らし合わせ自分を見つめさせようとする画一的な受けとめ方に終わってしまい,深い心の対話とならず表面的な考え方に陥りがちである。

 「道徳の時間」のねらいは外に向かう目と同時に,自分自身の目を内に向け深い内面的自覚によって自分を内省し,真実の自分の生き方を見つめようとする態度を養うことである。教師は常に生徒と共にものの見方考え方を探究する場であることを念頭におき,指導過程を工夫し,多面的,多様な考えの相互交流を基に内省化が図られるような授業の改善を痛感し,本主題を設定した。

(2)問題点
 ア.教師も生徒も道徳の内容の理想的に実現された姿だけに目を向ける傾向が強い。
 イ生徒の中にひそむ多面的,多様な考え方を十分に掘り起こす工夫がなされていない。
 ウ・深く物事を考える方法や手順を身につけている生徒が多くはない。
 工.授業過程で生徒の持っている考えを把握し生かそうとする工夫が不十分である。
 オ.謙虚な心で友達の話に耳を傾ける気持ちが不足している。
 カ.異性を意識するため本音を出すことに恥ずかしさを感じ,なかなか話せない。

(3)原因
 <生徒側>
 ア.自分を見つめる学び方が浅いために,友達の良さとか人間性に目が向いてない。
 イ.自己中心的なものの見方考え方が強く,自分の考えと友達の考えを比較検討する余裕がない。
 ウ.生徒自身が話し合いにより意見の相互交流がなされそれを基に自分の見方考え方が広がったり深まったりすることが少なかった。
 工.友達の話に耳を傾ける大切さを体得する場面が少なかった。

<教師側>
 ア.価値の理想的な追求にだけ力を入れ掘り下げて考えさせる工夫が不十分である。
 イ.生徒の多面的で多様な考え方をとらえ,それを交流させ響き合わせていく指導上の工夫が足りない。
 ウ.学級内で安心して発表できる雰囲気づくりの工夫が不十分である。

2.仮説

 (1)仮説のための理論
 1.内省化のための手だてとしてのパネルデ


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