福島県教育センター所報ふくしま No.93(H01/1989.11) -027/038page

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(2)検証と考察
  1.検証の観点
   ア.パネルディスカッションにより相互交流ができたか。
   イ.類型化の言葉は適切であったか。
   ウ.内省化が図られたか。

  2.授業の考察
 <パネルディスカッションでの授業の記録>
(省略)

   ア.パネルディスカッションの中から(多様な考えの交流も含む)1〜4のそれぞれの希望で立ち上がったパネラーを見て意外さを感じ,声を出した生徒がかなりいた。まさかあのまじめな人が1だとは,いつも静かで何を考えているかわからない人が4四だったりという意外性を持ちパネルディスカッションが始まった。聞く側は声が小さくて聞こえないと机をパネラーに近づけたり,耳に手をあてて聞く姿が見られ,生徒間の周波数がピッタリ合って真剣に取り組んだ。質問は2と4に集中した。4の二人の答えに教室がシーンとなった。かなり説得力があったようである。

   イ.内省化

 パネルディスカッションで相互交流が図られた中で生徒の中に揺れ動きが見られた。その後,指導過程3※の4の発問も活発に話し合いがなされ主人公の姿から人間の弱さと(自分を含めて)人間としてどうあらねばならないかも理解した。

  3.前・事後調査の結果

授業前の実態と授業の内省化の段階の実態の比較表
・検証授業1『弱さの自覚」
1 ほっとするのは当然だ。
2 ほっとする気時ちはわかるが、それが自分の友人だったら許せない。
3 友人の不幸を喜ぶなんてスポーツをやる者としてはずかしい。
4 ほっとするなんて他人の心の痛みのわからない思いやりのない人。

授業前の実態と授業の内省化の段階の実態の比較表
  4.結果の考察

   ア.生徒がパネラーを見て意外性を感じる姿,友達の話を謙虚な心で聞く姿,疑問を感じた時に質問する姿が見られた。このことから,自己中心的なものの考え方の強い生徒が友達の考えと比較しながら検討し自分の考えを深めていった点で,パネルディスカッションは内省化への効果があったと考えられる。

   イ.パネルディスカッションは生徒に新鮮さを与えたと思われる。そしてパネラーに意外さを感じ資料の主人公も含めてありのままの人間の姿も見ることができ,更に友達との相互交流ができた点や,心から納得し内省化した点でパネルディスカッションの活用は効果的であった。

(3)結論

 日ごろの授業での問題点を解決するためにパネルディスカッションを核とした話し合いを工夫し実践した結果,有効な手段であったと思われる。理由として,新鮮さがあったということ。教師の誘導的なおしつけがなく,生徒が中心でパネラーと聞く側の周波数がピッタリと合っていたということ。相互交流がなされ共鳴したり感動したり自分の考えの浅さに気づいたり自分の考えのすばらしさに気づいたりして響き合えたことがあげられる。

5.反省と問題点

 (ア)パネルディスカッションの方法を取り入れ内省化を図るためには,中心発問,基本発問補助発問と話し合い,組織化がしっかりなされていなければならない。なぜなら話し合いの落ち着き先が見えなくるからである。そのためには,主題構造図をしっかり把握しておくことの必要性を感じた。

 (イ)パネルディスカッションを経験したことにより,クラスの人間関係にも深まりが出てきたよう思われる。この研究の成果を更に深めていくよう努力していきたい。


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