福島県教育センター所報ふくしま No.94(H02/1990.2) -006/038page
4.問題解決のために企業経営から学ぷこと
「企業に学ぶ学校経営」が叫ばれてから久しいが,「作業の効率化」が必ずしもなじまないためか,それほどの進展を見せていないようだ。「しかし,学校も経営組織の一つである以上,.組織の原理・原則は基本的にあてはまるはずである。」(下村哲夫)この考え方に立って,前述の問題点の解決の糸口を,まず,企業経営から学ぶ。即ち,「教育目標の具現化めざし,協働意欲に燃えて全校あげた取り組みによる研修システムの改善」の糸口を,企業のOJT及びTQCから探ってみる。
(1)研修の日常化をめざすOJT的発想永田時雄氏が企業内研修の三つの分野の一つとして「OJT」をあげている。(「学校運営研究」1989,No.354)
「OJT」とは,仕事上の先輩が,実務を通して後輩を教えていくという研修システムである。これは,年令にこだわることなく,自己啓発によって深めた知識・情報・技術等を日常的かつ継続的に交流し合うものである。
この「研修の日常化」こそが,研修組織上の問題点を解決するために最も大事なものの一っではないだろうか。この「OJT」的発想は,前述の問題点である研修組織の固定化についての解決の糸口を示している。さらに,個人の特性等を生かした研修組織のあり方についても示唆を与えているといえよう。
(OJTについての参考文献「目標管理の知識と実務」猿谷雅治外,日本実業出版社)
(2)個人の創意工夫を生かすTOC的発想企業の多くが,今,組織の活性化・体質改善のために,「TQC」(Tota1Qua1ityControl)による自主管理活動を取り入れている。TQCは,小集団活動を基本とするが,各部門別に展開しない。つまり,生産管理を設計部門から営業部門まで全社あげて取り組むのである。(参考文献「経営者のリーダーシップ」鎌田勝,ぎょうせい)
この「TQC」的発想から学ぶことは,次 の2点である。
その一つは,研修組織を学校経営組織の中核に位置づけ,学校の組織力や機能性の維持・発展を図ることである。
二つめは(大規模校においては)研修組織を小集団化して個々人の役割を明確にし,自分なりの研究推進計画をもって取り組めるようにすることである。
とはいっても,感性的な面など計数管理のしにくいところまでTQC的発想のみで展開することは避ける必要があろう。
これらの企業の考え方によって,教育目標の具現化をめざして「全校あげて取り組む研修組織」づくりを大事にしたいのである。
5.問題解決のために組織論等から学ぷこと集団心理学や,組織論などの中に,経営組織づくりのうえで,参考にすべき考え方が,古くから提唱されている。二つの例をあげておきたい。
(1) パーキンソンの法則 (Parkinsons1aw)イギリスの経営学者パーキンソンは,1957年にパーキンソンの法則を発表している。これによると,20人以上の研究協議会は運営が困難であるばかりでなく,充実した研究活動は望めないということになる。
(2)心理学者の研究報告一方,R・Fべ一ルズ(Bales)ら,多くの心理学者が,「集団の大きさとメンバーの参加の度合い」についての研究結果を発表している。それによると,ほとんどの研究結果において,4名前後の場合がもっとも積極的な討議や活動が見られたという。集団が大きくなるにつれ,緊張が少なくなり,互いに責任を転嫁しがちになることが原因である。(「講座:現代の心理学7」小学館)
これらの組織論や心理学から学ぶことは,次の2点である。
第1点めは,研修組織の最小単位を4名前後にし,この最小単位をもとに研修の日常化を図るということである。
第2点めは,大規模校における研究協議会の総