福島県教育センター所報ふくしま No.94(H02/1990.2) -019/038page
プロジェクト研究報告基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究
(その3) 中学校数学科の実践から学 習 指 導 部
1. はじめに研究主題を受けて,数学科では次のような教科仮説を設定して実践研究に取り組んだ。
課題解決の過程で,小集団学習を取り入れ,単元全体を通して自己評価・相互評価を行えば,基礎的・基本的な内容を身につけさせるとともに,一人一人の「よさ」を生かし伸ばすことができるであろう。
2. 実践内容本稿では,解決の見通し及び課題解決の段階での小集団学習について述べることにする。
(1)解決の見通しの段階において
課題に対してまず自分の考えの見通しを立て,自力解決を図る。その後,小集団学習によりお互いの考えを出し合いよりよい方法を考える。この話し合いが,課題解決に対して見通しの持てなかった生徒にとっては解決へのヒントとなる。また,自他の考えを区別するために,ノートのとり方あるいは学習プリントを思考過程が見えるように工夫し,毎時間活用を図った。このことが自他の「よさ」を意識させる手だてとして有効であった。
(2)課題解決の段階において
見通しの段階での小集団学習の話し合いから得たいろいろな考え方から,自分の選んだ方法で解決を図る。その後,もう一度小集団学習を行い,班としての考えを練り上げる。この時の観点は,第一に整合性,つぎに,「より簡単なもの」「より明確なもの」「より広く使えるもの」である。この観点から,班としての考えをよりよいものにまとめることになる。この観点は,比較検討の場における多様な考えの追究の観点でもある。班での話し合いにおいては,画用紙を用い作業を通して考えを練り上げやすいように工夫した。
班としての解決方法がまとまると,学級全体が比較検討の場となる。各班からだされた多様な考えを学級全体として追究していくわけである。
3. 小集団学習を取り入れた結果の考察下図からも分かるように,個人では考えをあまり出せなかった生徒も,時限を追うごとに班での活動によって考え方を見つけた生徒の数が増えてきた。同時に,個人では1つの解決方法しか持てなかった生徒が,班活動によって2つ以上の解決方法が持てるようになり,解決の糸口をつかむための班学習から多様な考えを生み出す班学習へと変わってきた。
また,単元の終わりごろになると,課題解決に対する意欲が触発され,学習の仕方がつかめたことにより,自分なりの考えを持って班活動に参加する場面が多くなってきた。このことが「自分は,どこでどのように間違えたか。班の考えとどのように異なるのか。」と比較することにより班活動を活発にさせ,さらに比較検討の場における思考の深まりにもつながったと思われる。
更に,毎時間の自己評価・相互評価を通して,互いの「よさ」を見つけあい,「よさ」が意識化されたものと思われる。
4. おわりに「個人で考える一班・全体で考える一個人で考える」という「よさ」を生かす一連の学習の仕方を繰り返し積み重ねることによって,生徒一人一人が主体的な学習態度を身につけ,能動的な学習へと変容が見られるようになった。
(文責関博之)