福島県教育センター所報ふくしま No.94(H02/1990.2) -020/038page

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プロジェクト研究報告

情報活用能力の育成に関する研究


ー第一年次一(その4)

科 学 技 術 教 育 部

 これまで,91号から3回に分けて紹介してきました本研究報告も本号で終了ですが,今回は「研究成果と課題」について報告します。

 1. 評定尺度I、IIの設定

 すでに述べたように,下位目標1.〜12.の達成状況を調べる際には,情報活用能力が育成された状態像を客観的に評価し,しかも児童生徒の情意的な側面(意識)を評価することが必要であった。

 そのため,教師側からの観察評価による評定尺度I及び生徒側からの質問紙による評定尺度IIを設定した。

 特に評定尺度IIは児童生徒の自己評価によって評価するため,小・中・高校用と別々に作成し,発達段階などの差に対応できるよう文言の表現に工夫を重ねてきた。

 評定尺度IIの内容は,授業の事前,事後調査やその他の部分的な試行結果からみて問題はないと考えられるが,評定尺度I(教師)と評定尺度II(生徒)との結果を比較・検討するなど,更に第二年次の研究実践を通して検証を行う予定である。

2. 情報活用能カの育成プロセス(実践モデル)の作成

 授業を試行実践するに当たっては,情報活用能力が育成された状態像に基づいて作成した基本モデルを更に具体化した。(前号参照…これは小・中・高校それぞれに作成している)

 これは,学習過程が課題の発見から解決へと一サイクル進んだ後に,残された課題や新たな課題へと元の位置より高いレベルに到達する,いわばスパイラル型のプロセスにしたものである。

 このプロセスに基づいて行った授業の分析結果から見ると,情報手段との関連を密接にした学習過程は,授業の指導計画を作成するうえで有効な指標となるものである。

 また,本時の目標との関連を見て各段階の途中 のステップを変化させたり,重点化を図ったりすると,授業の単元(題材)や主題によっては更に効果的になる場合があることが分かった。

3. 検証授業の結果

 授業による成果をまとめると次のようになる。

1.パソコンの使用経験が少ない生徒たちが,キー操作を中心とするパソコンの使用に極めて好感を示し,授業の興味・関心が持続できた。

2.授業前にCAIソフトなどによりパソコンの基本操作を指導しておくことは大変有効である。これは基礎調査の全体的な傾向から見ても,ぜひ位置づけておきたい事前指導である。

3.事前,事後調査の比較から,下位目標の各要素が授業後に向上している。特に「情報手段の操作能力」については,下位グループほど向上しており,事後の満足感も大きい。

 また,問題点として次の事項があげられる。

1.試行した授業の資料などを準備するためには,相当の時間と労力が必要である。

2.各学校におけるパソコンの設置台数が少ない場合には,実態に即した授業への利用方法を更に検討する必要がある。

 以上のように試行的に行った授業実践であったが,主に「情報の収集,選択,処理」「情報手段の操作能力」の育成について,今後の研究実践に役立つ資料を収集することができた。

4. おわりに

 研究の第二年次(平成元年度)は小・中・高校それぞれに研究協力校を依頼し,各校の実態に基づく具体的な情報活用能力の育成プロセスと手だてを吟味しながら,多くの授業実践を進めている。

 第二年次の研究成果については,今後の当教育センター研究紀要並びに所報などで報告したい。

(文責 峯島 和彦)


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