福島県教育センター所報ふくしま No.94(H02/1990.2) -021/038page

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プロジェクト研究報告

事例を通した教育相談の進め方に関する研究


一予防的な指導援助(第1年次)一
(その4)

教育相談部

1. 予防的な指導援助の要点と基本的な対応

 調査,学校での事例,相談部での相談事例を基に,予防的な指導援助に必要とされる次の12の要点と基本的な対応を集約できた。

1 指導援助者の姿勢
(1)問題行動を未然に防ごうとする。
(2) 相談的な教師として対応する。
2 子供についての理解
(1)子供一般について理解する。
(2)子供個人について理解する。
3 問題行動についての理解
(1)問題行動の要因や発生のメカ ニズムについて理解する。
(2)発達段階に見られる主な問題行動について理解する。
4 問題点の気づき
(1)身体・生理面の問題点に気づく。
(2)知能・学業面の問題点に気づく。
(3)性格・行動・情緒面の問題点に気づく。
(4)対人関係の問題点に気づく。
(5)環境面の問題点に気づく。
(6)考え方・生き方の問題点に気づく。
5 ラポールの形成
(1)本人とのラポールを形成する。
(2)家族とのラポールを形成する。
6 資料収集・予測診断・予防仮説
〔資料収集〕
(1)資料収集の計画を立てる。
(2)子供の問題点と関連があると思われる資料を収集する。
〔予測診断(診断)〕
(1)素因の形成と誘因とのかかわりを明らかにして問題行動発生の可能性を予測する。
(2)問題の発生を抑制する要因(抑制要因)を見つける。
〔予防仮説(指導仮説)〕
(1)素因や誘因を改善.解決.除去し,さらに抑制要因を強化する ための見通しを持つ。
(2)本人,家族,学級などに対寸る貝体的な予防仮説を立てる。
7 本人への予防援助(指導援助)
(1)ラポールを形成する。
(2)問題点への気づきを図る。
(3)問題行動につながる素因を改善,解決する。
(4)問題行動発生の抑制要因を強化する。
8 家族への予防援助(指導援助)
(1)ラポールを形成する。
(2)問題点への気づきを図る。
(3)問題点の改善,解決を援助する。
(4)抑制要因の強化を援助する。
9 学級金体への予防援助(指導援助)(1)学級全体の望ましい人間関係を作り,相互支持的な集団の雰囲気を醸成する。
(2)規範意識を持たせ、けじめと規律のある学級集団を育成する。
(3)本人が集団に受け入れられ.適応していけるよう.友人関係を調整する。
10 予防体制(指導体制)
(1)組織としての体制を整え.予防的な指導援助の意識を高める。
(2)役割を分担し、協力して本人の予防援助に当たる。
(3)必要に応じ、関係機関との連携を図る。
11 フィードバック
資料収集・予測診断・予防仮説・予防援助のそれぞれの過程でフィードバックする。
12 予防援助の終了
(1)終了の判断をする。
(2)その後の様子を見守る。

2.問題行動の形成と予防過程

 「予防的な指導援助」に必要とされる要点が問 題行動の予防にどのように働いたか,問題行動発生のメカニズムを用いて説明を加えた。(下図)

図1 問題行動の形成と予防過程
図1 問題行動の形成と予防過程


3.考察とまとめ

 予防的な指導援助のとらえ方を明らかにしたことは,指導援助の対象と内容が明確になり学校で焦点化されて指導援助ができることにつながると思われる。また,調査と事例から要点と基本的対応を集約し,これらが問題行動の発生の予防につながることを説明できたことは,今後の指導援助を意図的にすすめるのに役立つと思われる。

 第二年次の研究は,第一年次研究において集約した12の要点と基本的対応が,「予防的な指導援助」に有効であることを実践を通して確認する。

(文責遠藤美代子)


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