福島県教育センター所報ふくしま No.98(H03/1991.2) -002/038page
特別寄稿(論説)
「コンピュータ教育元年」から
「コンピュータ教育活用元年」へ
−5年間の歩みを中心に−
文部省初等中等教育局教科調査官 浅 見 匡
はじめに
我が国の初等中等教育におけるコンピュータに関する教育は、昭和40年代後半に高等学校の専門教育において、情報処理教育の一環として行われるようになった。(文部省では、情報処理教育担当教員等養成講座(専門コース)を昭和45年度から高等学校(商業・工業の専門学科)又は情報処理教育センターで、情報処理に関する教員又は職員に必要な知識と技術を習得させることをねらいとして開催している。)
その後もコンピュータに関する教育は高等学校を中心に徐々に拡大されてきた。
ところで、学校教育は、児童生徒に過去の貴重な文化遺産を適切に伝えるとともに、科学技術の進歩等、社会の変化に主体的に対応できる能力や態度の育成をねらいとして行われる。殊に、情報社会の進展に対しては、すでに、児童生徒の囲りに各種のコンピュータ等の情報機器があることを考慮しつつ、将来の高度情報社会に生きる児童生徒に必要な資質を養うための教育が必要である。
1 コンピュータ教育元年
いつの頃からか、また、だれが言いだしたかはっきりしなしが、昭和60年を「コンピュータ教育元年」と言う人がいることに気付いた。そこで、昭和60年に関する教育についての施策、提言等があるに違いないと思い資料を整理してみたところ、次のようなものがあり、確かに「コンピュータ教育元年」といわれるのにふさわしいものであると感じた。例えば、次のようなものがあった。
(1) コンピュータの整備……昭和60年度から公立の小・中・高等学校等及び特殊教育諸学校へのコンピュータ導入について国庫補助が新しい教育機器(特にコンピュータ)を使用した教育方法の開発研究を行うため、開発された。(この事業は平成元年度まで行われ、補助金額は合計123億円であった。なお、昭和60年度から平成元年度のコンピュータの設置率の推移は次の通りである。小学校2.0%→30.9%、中学校12.8→58.9、高等学校81.1→97.8、特殊教育諸学校21.1→71.0)
(2) 社会教育審議会答申(昭和60年3月29日)……「教育におけるマイクロコンピュータの利用について(報告)」では、「マイクロコンピュータ教育利用研修カリキュラムの標準案」で、教育関係者を対象に行う研修目標や研修事項等について、段階別(初級、中級、上級)の標準を示した。(以後の研修会開催の際の指針となった。)