福島県教育センター所報ふくしま No.98(H03/1991.2) -011/038page

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 2. 拡散的思考への働きかけ

(1) 学習意欲の喚起

 柔軟な造形的思考や独創性は、即学習の成果として表れる場合と知識・技能の蓄積だけに終わってしまう場合とがある。個性の伸長を願うとき、後者でもそれが後に生かされれば目標は達成したといえよう。

 「熱転写によるプリント染色」は生徒にとって新鮮な教材で、デザインの学習を主に版画や工芸の理解(後述)との関連も図った。この染色の原理は簡単であるが表現のバリエーションは奥が深く、拡散的にアイディアが広がる教材であり、生徒の学習意欲を喚起し、持続させることができる。

(2) 「熱転写によるプリント染色」の原理

 1. 熱転写用の染色紙を切って更紙等に貼りプリントする図柄の版を作る。

 2. アクリルかポリエステル系50%以上の繊維や不織布に1をのせる。

 3. 高温(180℃程度)のアイロンで40〜60秒間版の上からプレスする。

 ※ 専用のプレス機があるが高価である。

図1
染色紙


 基本色―A5判大 10色

 中間色―B5判大 10色


ヒートプレート

専用プレス機
クッション
専用プレス機


アイロンによる染色
アイロンによる染色


(3) 参考作晶からの技法の推察

 発想・構想を援助するために指導者は参考作品を示すことが多い。そして、単純な模倣でなく独創性の出現を期待する。下図は技法を推察させる参考作品の例である。

1
1


2
2


3
3


1 は染色紙を紅葉の葉でマスキング

2 は1で使った葉に着いた染料を転写

3 は1で使った染色紙そのものを転写

 ここで染色紙をインクのついたローラーに例えると1は版画のマスキング法、2は実物スタンピング、3は立体版画の手法に酷似していることがわかる。

 このようなことから各種の版画の技法や切り絵、貼り絵の手法等と関連づけて豊かな造形的思考を想起させることができる。

 3. 版画の技法から拡散的思考へ

(1) 紙版画、フェルト版画的手法

 切り絵や貼り絵は図柄に応じて色紙や染色した紙を切り抜いて台紙に貼りつける。切り抜きはカッターやはさみを使ったり、指先でちぎったりする。この工程は、本教材のプリント染色では版を作るのと同じであり、これを熱転写すれば完成となる。

 これは紙版画やフェルト版画に似た凸版的な手法である。紙版画は貼りつけた紙の厚みのため形のまわりに色が着かないが、この染色紙は薄いのではっきり色分けされる。この染色の基本的な版の作り方である。


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