福島県教育センター所報ふくしま No.98(H03/1991.2) -012/038page

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(2) 銅版画的手法

 高校生ともなると染色紙の色を抜く方法にも考えが及ぷ。染色紙の染料を化学的に処理する方法と物理的に剥離する方法があるが、ここでは授業の環境構成との関係から物理的な方法について述べる。

  1. メゾチント的手法

 バニシャーで銅板の溝を潰して白地を作るような手法で、電動の消しゴムで染色紙の染料を落としていく。いわばハイライト描法でグラデーションの効果も表現できる。また、フロッタージュのように染色紙の下に硬い凹凸のあるものを置いて、サンドペーパー等で染色を削る手法もある。

図1


  2. ドライポイント的手法

 明暗は逆転するが、二一ドルで銅板にきずをつけるように、染料をカッターナイフの先等でスクラッチする手法である。

 この他削り落とす代わりにでんぷん糊等を防染材にして直接染色紙に形をかいたり、ティッシュペーパーを形に切り抜いてマスキングしたりする手法もある。

図2


(3) ステンシル的手法(孔版)

 先述のように染色紙は2種20色あるが、薄い色は2、3回、濃い色は4、5回繰り返し染めることができる。しかし、漸次染め上がりの色は薄くなっていく。

 ある形や模様を繰り返し染めたい場合には、型を切り抜いておく方法がある。

 トレーシングペーパー等に型を切り抜いておいて、それをユニットとして孔の部分に染色紙を当て、染色紙を取り替えながら染める。

図3


(4) その他の手法

 重ね染めができるので同じ版をずらして染めたり、1度染めたところに別の色で重色もできる。また、染色紙を空染めして色を薄くして使えば色合いは無限に広がり、裏返しに使えば輪郭線の表現ができる。染色紙をもんで使えば、しわの効果も出る。

 技法中心の展開になったが、それだけ表現の奥が深く発展性のある教材といえる。

 授業の実践に際してはアイロンの数や電力の容量にも留意する必要がある。

 まとめ

 この題材では既学習内容の版画と関連させ、その基礎的・基本的な内容の理解を深め、手法の推察や試行をさせる場を設けて創造的思考を刺激することによって拡散的思考が育まれることをねらいとした。

 先述したように作品の善し悪しだけで評価するのでなく、いかに創造力を働かせて取り組んだかが大事であり、ここには生涯学習への姿勢を育てる意図も含まれる。そのためには生徒の個人差に応じられる授業の内容の構造化、環境構成、参考資料の提示法について具体的な手だてを講じて指導に当たることが大事であると考える。


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