福島県教育センター所報ふくしま No.98(H03/1991.2) -024/038page

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 お便り、ありがとうございました。

 先生の毎日の生徒たちとのふれあいが目に見えるようで、大変興味深く読ませていただきました。「アドバイス」というより感想を記してみたいと思います。

 まず、最初に感心いたしましたのは、先生が「単に説教したり、訓戒するだけでは律しきれない何か」を感じ、「ここからが担任の仕事」と、3人の心の中に迫ろうとして努力なさったことです。

 厳しい注意が有効な場合もありますが、特に美香に対しては先生のようなアプローチが不可欠であるように思います。まわりくどく見えても、心にふれるものがあって生徒は内側から変容していくものです。

 また、先生は美香とかおりと由紀子を一つのグループとして扱われ、3人の持ち味をよく生かしてご指導なされたと思います。グループに対する指導は必ずしも一様ではありませんが3人を一緒にご指導なされたのは適切だったと思います。

 どうして、かたくなな美香の心が解けて学校に来るようになったのでしょう?

 私たちには、それはかおりと由紀子の前で先生が流された「涙」によるものと思えるのです。「涙」の裏にある 先生のお気持ちを 、2人はしっかりと見据えていたように思います。その2日後、登校するまでの間に、美香とかおり、由紀子の間にどんな会話がかわされたことか、いずれ話してくれる時が来るかも知れません。

 先生の生徒を思うひたむきなお気持ち。多分それは「誠実さ」ということだと思いますが、そのお気持ちの前で、3人の生徒がそれぞれに考え、自分をみつめ、お互いに話し合い成長していく過程が、指導の経過の中に見えるような気がいたします。進路について生徒たちが真剣に考えるようになったのもその表れなのではないでしょうか。

 もちろん、先生もお気づきのように、先生のこ指導は、他の先生方―厳しさの部分を代弁なさって下さっているように感じられます―と補完関係にあります。良い連携がとれているのも、先生のお人柄の良さによるものなのでしょう。叱るべき時に、「叱ってあげること」、生徒が嫌がることも、言うべき時には「きちんと言ってあげること」も大切なことですね。

 でも何よりも私たちは、先生のお気持ちの深さに打たれました。先生に「丁寧にお礼を言った」美香の母親も、先生のその お気持ち に心から頭を下げたのではないでしょうか。

 なお、グループ指導については、「所報94号」も参考にして下されば幸いです。

 生徒一人ひとりを生かしていくには、人間の心に対する洞察力や、時には意識した指導方法が必要です。しかし、その根底にあるものは、一人ひとりの生徒に対する誠実さ―思いの深さ―に他なりません。私たち自身、先生のご指導から大きな示唆をいただいたように思います。

 12月に向かい、寒さがつのりますが、先生の一層のご活躍、ご研鑽と、3人の生徒たちの今後の成長をお祈りいたします。


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