福島県教育センター所報ふくしま No.100(H03/1991.8) -021/038page

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所員個人研究

ーことばに遅れのあるA男の指導援助ー

教育相談部   伊 勢 英 子

1.研究の趣旨  教育相談部で対応した平成元年度の来所相談件数は241件,延人数は1,191人,また,電話相談では全交信回数は992回であった。平成2年度は昨年度を上回る相談作数があるものと予想される。
 相談の内容は,不登校をはじめ,盗みや集団不適応,暴力,自閉症的など多種多様にわたっており,問題内容も深刻化,長期化の傾向にあるものが多く,その背景も複雑化していて,発生の原因を探ることも困難なものが少なくない。
 中でも,指導援助に長期問を要す「自閉症的」は,作数こそ少ないが年々増加の傾向にあり,相談延人数(毎週定期的に来所した人数)は,不登校に次いで多い。
<主な主訴別来所相談延人数>
年度 不登校 集団不適応 自閉症的 不良交友 盗み 多動傾向 暴力 かん黙
62 1,104 86 160 89 35 49 7 46
63 872 130 186 45 29 18 5 41
平1 647 64 209 21 32 17 7 10
 そこで今年度は,定期的に来所相談する「自閉症的な児童」に,会話の仕方を身につけさせる指導援助について追求することが重要と考え,言語活動を巾心とした事例研究をすすめることにした。

事例
1.対象児A男小学5年生

2.問題の概要
 昭和62年3月「ことばが遅れている」ことで初回来所相談。委託している鑑定医より「自閉症」と診断され「自閉症」にっいての説明が両親にあった。父親は「そのうちなおるだろう」と楽観的であり,A男へのかかわりも弱い。
 行動の特徴は,以前は泣いて暴れるなどのパニックがあったが,現在は少なくなりことばの数が増すなど,少しずつ変容はしているが,相互性のある会話ができず,話も反復的である。また,ひとっのことにこだわると,そのことにっいてのみ質問したり,話し続ける傾向がある。
3.A男の実態
(1)生育歴(主に言語面)
○在胎期10ヵ月。体重3320g
○産声,哺乳力は普通。発語1歳
○初歩1歳。3歳児検診でことばの遅れを知る。
○幼児期,独言,ことばの数が少ない。
気持ちをことばで言い表せない。反響言語(おうむ返し)小学校に入学以降反響言語は消失したが,遅延生反響言語(主に過去に聞いたことのあることば。例えばTVのCMなどを関係のない場で繰返す)を示すようになった。


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