福島県教育センター所報ふくしま No.100(H03/1991.8) -028/038page
子も喜びと不安が交錯した複雑な気持ちであるが、課題をクリアしてこそ満足感を味わうことができる機会でもある。計画の段階から全員での話し合いを繰り返し、納得のいくようにした。役割分担、班編成、レクリェーション等に個の長所が生かされるようにした。そのためか、炊事係りとして腕をふるう子、演技力を出す子、目立たない裏方役に満足している子等、授業場面では発見できない友だちの良さに触れ、感動し認め合う雰囲気が強められた。
4 個への指導
〔自己理解を深めるための作文〕
―元気が良すぎるT男―
T男は体格も良く肥満ぎみ。活発だがけんか早い。正義感が強く納得がいかないと担任とでも口けんかをする等、カッとなり易いため今までは、問題児的取り扱いを受けてきた。
「このごろの自分」 T男ー4月
ぼくはいよいよ5年生、高学年だ。今までずいぶんあばれたのではずかしい。
母にも「おまえは体格がいいからあばれるとけがをさせるよ」と何度もおこられた。でも、ぼくにも理由がある。差別をしたりうそをついたりする人を見ると許せない。
4年生の時は、M先生が約束を破ったので本気でもんくを言った。ー略ー
これらの資料から、T男の気持ちを大切にしながらも周囲の人の気持ちをわからせるために面接を行った。
〔T男とのカウンセリング〕 ー5月
担:体格いいねぇ、何でも食べる?
T:うん、嫌いなものない。
担:そう、いつもにこにこしているね。
T:うっ(つまる)そうでもない、短気。
担:短期なの!そうは見えないよ。
T:(ニヤニヤ)きのうF君がY君の悪口言ったからけんかした。
担:あっそうだったの。正義感が強いんだね。りっぱだよY君のためになんて。でも暴力はいけないよ。君なら話合いで解決できたかもね。
T:うん、Y君ももっと元気だせばいい。
担:そうなの、じゃあ、Y君を励ましてね。
この後もチャンス面接を数回試みた。Y男をかばう姿に自身がでてきたので、その力を学級集団のために生かすようにした。
〔学級対抗球技大会〕 ー9月
9月の球技大会では、運動能力も優れ統率力も出てきたT男が実行委員に選ばれた。
何度か壁にあたると担任に助けを求めに来たが、ヒントを与えるぐらいにして級友の信望に応えるように励ました。
イライラすることはあっても暴力をふるうことはなく、準優勝した男子チームと共に女子の応援に汗を流していた。
〔事件予告...母より〕 ー10月