福島県教育センター所報ふくしま No.100(H03/1991.8) -029/038page

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 だいぶ落ちついたかに見えたが甘かった。
10月中頃の放課後、T男の母親があわてて「いやがらせを言ったりうそをついたりするF男を許せなくて、友だち4人とリンチする相談をしている。」と、訴えて来た。
 その翌日T男と話し合う。
 F男に対しての感情はわかるが、集団でのリンチは卑怯(ひきょう)であること。言葉で解決しお互いの気持ちをわかり合うこと。F男と学級全体には担任が指導することを約束。

〔T男が変わった〕みんなの声  ー12月
 12月になるとT男はだれの目から見ても落ちついて来た。級友だけでなく他の先生方もその変容ぶりをとらえていた。
○T男は暴れなくなった。
○T男は勉強も本気だし成績も伸びてきている。(分科担任...社会)
○小さい子にやさしくなった。荷物をもってくれた。(低学年の先生)
○T男はよく働く、後始末まできちんとしてくれた。(クラブ活動担当教師)

 そこで、今までに担任がとらえたその子の良さを年賀ハガキに記し、全員へ投函した。これは、自分の長所に気づかせ自信をもって行動できるようにするねらいである。

〔年賀ハガキ作戦〕担任からT男へー1月
 あけましておめでとう
 正義感とおもいやりいっぱいのT男君
 がんばってくれたね ありがとう
 3学期も頼りにしてますよ
 認められることはどの児童にとっても自信を与え、生きる喜びにもつながっていくことが感じられた。T男だけでなく学級全体にもそれを感じた。

5 子どもからのプレゼント   ー3月
 4月に感じた子どもたちの印象は、落ち着きがなくたいへんだということだった。そこで、一つ一つの問題に全員で取り組み全員を生かそうと試みてきた。平坦ではなかったが行事が終わるごとにまとまりを感じた。
 子供のもっている可能性はすばらしいものである。あきらめないで引き出してやることが自信や意欲につながると言えよう。この一年間は、子供たちとの出会いにより教えられることばかりだった。

6 まとめ
 これらの事例から、学校においては教師が長所を認め、学年に合った学習の仕方を理解させることにより、高次の欲求への進むことがわかる。自己理解ができれば安定し、自分の能力を発揮することができるようである。
 そのためにも、日頃から大人は、児童の良さを認め自信をもたせることに留意しなければならない。一部の児童ではなくすべての児童にそうありたいものである。

*自己理解を深めるための作文の例
 ○私の生い立ち  ○私の好きなもの
 ○私の顔(手、足)○私の進む道
 ○私の友だち   ○私の尊敬する人


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