福島県教育センター所報ふくしま No.102(H04/1992.3) -006/038page

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3.授業実践と生徒の感想
 この教材を最初に製作したのは,1980年のことであったが,その後,若干の改良を加え,「世界史」の授業の中の単元の導入などに用いて,学習の動機づけに生かしてきた。
 次の単元計画は,問題解決学習型の授業計画であり,生徒のグループ学習や発表と組み合わせたものである。
過程 学習内容
1 導入(問題の発見) (1)スライドから、問題意識化を図る。
(2)感想を書かせ、原因や背景を仮説化させる。
(3)研究テーマを決定し、グループ分けをする。
2 調査
*課題
(1)図書館などで、グループごとに調査をする。
発表シートを完成させる。
3 発表I (1)グループごとに発表と質疑を行い、問題点を整理し、理解を深める。
4 発表II
※まとめ
(1)グループごとに発表と質疑を行い、問題点を整理し、理解を深める。
(2)教科書に沿って、知識の整理と確認をする。
(3)今後の研究の展望についてまとめる。
このような授業展開の後に,生徒が記した感想例を2編紹介する。
感想I(ナチズムについて調べた生徒)
私が当時のドイツ国民なら・・・ガールスカウトにあこがれたヒトですから、ヒトラーユーゲントになったと思います。・・・でも、例えば、ユダヤ人の同級生がいて、迫害しろと言われても、それは、つらい。ドイツ人もたぶんつらかったのである。しかし、迫害した。狂気にとりつかれたのか。・・案外正気だったのか。 ドイツ人は、自分の心を「迫害」してしまったのだろうか。
感想II(アウシュビッツについて調べた生徒)
私は、以前から、ナチズムに抵抗した人々がいなかったのかと、疑問を持っていた。しかし、今回調べてみて、自分の生命をかけない限り、不可能だったのだということが、よくわかった。アンネやその家族も立派だか、彼らをかくまった人々の勇気には・・ただ、頭が下がる。ショル兄弟や、アウシュビッツで身代わりになって殺されていったコルベ神父などのことを考えると、自分が今まで歴史の何を見てきたのだろうと思うのである。

4.まとめ
 歴史的な事象にっいて,客観的に理解し評価しようとするならば,歴史を生き,形成する人間の一人として,当時の状況を生きた人々の心に迫ろうとすることが必要に思われる。それは,歴史の中に生きている人々の姿や心自らの弱さと人間としての尊厳の間で揺れ惑うを発見し,生きることの意味を求めようとすることでもあろう。歴史学習における思考力や判断力はこのような人問的共感力に裏打ちされて,はじめて生徒自らの生き方にかかわるものになり得るのではないだろうか。


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