福島県教育センター所報ふくしま No.102(H04/1992.3) -022/038page

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基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究
(第5年次)

学習指導部

 本研究は,学習指導の改善の視点から,基礎的・基本的な内容を身につけさせる過程を通して,児童生徒一人一人の個性を生かし,伸ばす学習指導の在り方を,実践的に追究してきた。
 昭和62年度から始めた本研究は,第1年次の主題に関する文献研究及び調査のための理論研究に基づき,第2年次以降は研究理論の構築とともに,毎年教科等を変えて実践してきた。
 今年度は,実践教科を小学校体育とし,第4年次までの検証の結果を踏まえ,研究内容や研究方法をより深める方向で実践を進めた。実践にあたっては,研究協力校(福島市立平野小学校)との連携を図り,技能教科の特性に配慮しながら,「よさ」を生かす学習指導の在り方を一層工夫して主題に迫ろうとした。
 また,今年度は研究の最終年次にあたり,各教科等で試みた,基礎・基本の定着を図り,「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習指導の手だてとその有効性について成果をまとめた。
 まず,体育科の実践では,第4学年の児童を対象に器械運動領域を取り扱い,研究を推進した。実践への主な方策として,マット運動と跳び箱運動(主運動と主運動)を組み合わせた展開,異質グループの学習形態による個に応じた練習の場の設定,単元全体を2時間ずつ三つの大きな区切りとした指導計画の工夫等が挙げられる。また,児童一人一人の能力に応じた課題を設定させるとともに,お互いの「よさ」を認め,励まし合える学習活動を展開した。
 このことによって,課題解決への意欲が高まり,基礎的・基本的な内容の定着につながった。また,児童は主体的に学習に取り組むようになり,「よさ」を伸ばそうという意識が表れた。
 5年間の実践研究では,各教科や道徳の特性に配慮しながら,児童生徒の実態に応じた学習指導過程を設定してきた。「よさ」や「その子らしさ」を育てる学習指導の各段階では,種々の具体的な手だてを講じ,多様な学習活動の展開を試みた。
 その結果,個性を伸ばすために基礎・基本の定着がいかに重要であるかが検証できた。また,基礎的・基本的な内容の定着を図る過程で,事前に把握した児童生徒一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を生かす場の設定が不可欠であるということが実証された。
 今後は,新学習指導要領の趣旨に基づき,児童生徒一人一人の「よさ」や「その子らしさ」を生かす評価の在り方にも目を向けて研究を発展させていきたい。


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