福島県教育センター所報ふくしま No.102(H04/1992.3) -030/038page
担任 今の成績?今の成績が君の実力だろうか。どうだい…。
A男 目標が決まればもっとがんばれると思います。
担任 君ならきっとできる。努力してみないか。
A男 ええ。がんばってやってみます。
(5) 「すごい,ぜったいになる!」
ある日の日曜日,A男と同じ班の二人はA男の父の車で,福島空港とK建設会社にオペレーターの仕事を見に行くという。
担任は,教え子を通じて会社の仕事の内容を説明してくれるようにお願いした。
A男たちは,以前に先輩のBさんから話されたことが目の当たりに展開されていることに驚くとともに,さらに建設会社の仕事に興味を抱いたようである。
A男は目を輝かせ,担任に次のようなことを話した。その話の一部を紹介する。
先生,女性が大人の背丈以上あるタイヤをつけた産業用ブルトーザーを軽
々と運転しているんです。会社に入ってから6箇月間研修してオペレーター
になるんですよ。コンピュータで操作するんです。すごいですよ。ぼくも,
ぜったいオペレーターになりたい。…
(6) 「自分をためしてみよう!」
その後のA男や他の二人は,すっかり落ち着き,勉強に真剣に取り組み始めた。
12月になり,三者面談が行われた。以下はA男,母親との面談内容の一部である。
母親 先生,A男の家での様子が変わりました。私に言われなくても自分から勉強するようになりました。
担任 A男君は,今どんなことを考えているの。
A男 社会人になって専門の技術を持って働くということは,すごいことだと思いました。
僕も自分の力を試したくなりました。どれだけできるか自信はあまりないけどできるだけやってみようと思っています。
今,A男は自己理解を深めながら,目標に向かって努力し続けている。
5 まとめ
「先輩の体験談を聞く会」を実施し,自己実現に向かって積極的に生きる生き方を学ばせるとともに,「個別面接」によって自己理解を深めさせながら,自信と誇りを持たせ,将来の目標を具体的に設定させたことは,将来への向上心を高める上で有効であった。また,学校と家庭が連携し,生徒に対する理解を深めながら援助をしていくことにより,将来への向上心を一層喚起することになった。
今後も,生徒の個性を尊重しながら,学年,場面に応じた将来への向上心を高めるための指導援助をしていく必要性があると考える。