福島県教育センター所報ふくしま No.102(H04/1992.3) -031/038page
価値に対する心の変化の自覚を大切にした道徳の時間の指導
一比較視点による価値観の吟味・検討を通して一会津坂下町立坂下小学校教諭 新井田 庄 次
1.研究の趣旨
(1)研究の動機とねらい 本校における道徳性に関する児童の実態については,実態調査及び教師の日常観察などから,友達の価値観について考えたりふれたりするという経験が少ない傾向がうかがえた。そこから多様な価値について比較・検討してみるという意欲がやや足りないという実態が浮かび上がってくる。
また,道徳の時問の実践から児童の道徳的実践カの現状を考えてみると,主人公に共感したり,体験と結びつけたりして本気で自分のこととして取り組むことの意識が弱く,道徳的実践力につながる心情及び実践意欲の高まりが不十分に感じられた。
このような実態をとらえたとき,今まで実践してきた道徳の時間の指導を改めて見直し,考えてみる必要が出てきた。
意欲及び欲求を起こさせる前に教師の授業における方向づけを持った指示や発問が多くなり,価値の追求に重きを置いた授業の構成となり,その結果道徳的価値を自覚して,主体的にとらえようとする意識が弱くなりがちであった。
そこで,児童がそれまでの自分の価値観と多様な価値観にふれた後の考えを吟味・検討する活動を通して,自己を見つめていく道徳の時間の指導のあり方をさぐっていきたい。
(2)問題点
○ 自分の考えをしっかり持っという段階の学び方が弱かった。その結果,発言が一元化しやすかった。
○ 児童の心情や問題意識を掘り起こしそれを生かしながら,深まりのある考えをさぐる授業になりにくかった。
○ 問題場面を自分のこととして共感してとらえることも少ない。
(3)原因
1.児童側
自分なりの見方・考え方と他の友達の見方・考え方を比較し,吟味・検討するという意識が弱かった。また,他の子どもの多面的な見方・考え方に進んでふれようという意識も低い。
2.教師側
○ 教師の細分化された発問でコントロールしがちであった。その結果,断片的な思考が羅列され,深まりのある考えまでいたらなかった。
○ 自己の価値観を意識・自覚させ,他との比較・検討をさせていくため