福島県教育センター所報ふくしま No.102(H04/1992.3) -033/038page

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○A〜Dにおける児童16名は,よく考えて行動する思慮へと変化している。(H,Iから動いた児童)
イ心の動きによって,価値の主体的自覚を促すために抽出児がまとめたものは次の通りである。(一部)
〇どっちにしようかなと迷っていたけど、友達の意見を聞いて約束だから守った方がいい。
〇ソフトの練習に行くとき宿題を済ませてから行く。
〇今までは友達だからと思っていたが、今度からは自分が本当にいいと思う人にする。
〇今まであまり友達のことを考えなかったけど、これからは友達のことも考えないといけないなと思った。
3.結果の考察
ア. ノートにそれまでの経験をもとにした価値観を記入させておいたことは,価値への方向付けとなり,自己の価値観の意識化に効果的であったと考える。
イ. 挿絵,組み絵を価値追求に入る前に使用したが,問題場面及び主人公への共感が強くなり,場面状況を明確にとらえることができた。
 また,絵の導入により中心発問を具体的に受けとめ,主人公の心の動きをじっくりとらえていたと思う。
ウ. 自分を振り返る視点を持つことにより自分のそれまでの価値観をしっかり意識できたことが,多様な価値観にふれたとき,その価値観との異同についてじっくり考えることにつながり,よりよい価値の発見など心の動きが見られたと考える。
工. それぞれの価値観を明確にさせたことで,価値に対する心の変化が見られ,今までの自分をもう一度見つめ直すことにつながってきた。
5.結論
(1) 自分を振り返ることによって,自己の価値について意識して授業に臨むようになり,木時の価値について自分なりの見方,考え方が持てるようになった。
(2) 問題場面の状況認識を組み絵や中心発問などによりとらえさせたことは,場面を明確に,構造的に把握させる手段として効果的であった。
(3) 反応を分類し,その中から意図的に似たものを指名発表させ,組み合わせることは,価値の類型化にもつながる効果的な指導法であると考える。
(4) 比較視点を明確にした授業への改善によって,児童は具体的に自己を見つめ直すことができる道徳の学び方を得ることができるようになった。また,視点の比較により心の変化が自分自身でとらえられ,新しい発見が見られ,児童の道徳的価値への主体的自覚が出てきたと考えられる。
6.反省と問題点
(1) 自分を振り返る視点を持たせるための発問設定を十分吟味する必要がある。
(2) 中心発問の内容を十分検討して取り上げる必要がある。
(3) 価値の主体的自覚を図るため,更に比較視点を通した道徳の授業の学び方を徹底させていきたい。
(4) 今回の研究で得られた成果を他教科,生活に生かし,共に悩み,成長していける学級づくりに努力していきたい。


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