福島県教育センター所報ふくしま No.103(H04/1992.6) -025/038page

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な変化があったのかを理解することを主眼として,A男と両親からじっくりと 話を聴く。
[家庭訪問を通して]
<両親との面接から>
 A男が非行化した時,父親は暴力で指導しようとした。このため,現在,A男と父親はほとんど話をしない状態である。
 そこで,両親の苦悩を受容するとともに次の点をお願いした。
・A男に対し暴力を振るったり,非難したりしないで,家庭を温かい場とする。
・A男の長所をほめることに心掛け,姉と比較せず,A男の個性を大切にする。
<A男との面接から>
 A男は父親に殴られたことを今でも恨んでいた。また,口うるさい母にも嫌気がさして「家に居るといらいらする」と言う。
非行は,そんな気持ちのはけ口だったようだ。
 学校においては,専門教科が難しいと感じていた。基礎となる中学時代の数学がよく分かっていないことが,つまずきの原因だと本人も自覚していた。A男は,少しでも分からない所があると,勉強するのが嫌になるという。
 学校生活に意欲を無くした最大の要因は 授業が分からないこと だと思われた。
それでも何回か面接を続ける中で,徐々に卒業への意欲を持つようになった。
[各担当教師からの指導援助]
 面接の結果,A男に対しては,担任との信頼関係を基盤に,得意教科を伸ばし,不得意教科の学力補充をすることで,学校への適応を図ることができると考えた。
 そこで,A男に登校を促し,学校において次の3点からの指導援助をしていくこととした。
1. 得意教科を伸ばす。
 製図担当のR先生より「A男は素晴らしい製図を書く。ぜひ,じっくりと指導し,製図コンクールに出晶させたい。」という話があった。きちょうめんな性格が,作業にも現われてくるらしい。A男もR先生を信頼しており,目標に向けて努力させることは意義のあることだと思われた。
2. 不得意教科の学力を向上させる。
 数学のS先生には特にお願いし,学習面で最大のネックになっている中学数学の復習をこの機会にしてもらうこととした。
3. 担任との信頼関係を築く。
 担任のK先生が「書道」を特技としていることを生かし,「習字」の指導を取り入れ,A男の情緒安定を図るとともに,ラポールを形成する手段の一つとした。
[A男の立ち直り]
 「製図]にしても「習字」にしても,A男にとっては自信のある分野であり,きちょうめんな性格も反映して,着実に上達していった。また,周囲から認められることで,さらに意欲を高めていった。
 一方,「数学」の学習には最初あまり気分が乗らないようだったが,「分からないことを分かるまで教えてくれる。中学の内容を闇いても恥ずかしくない。」と次第に喜んで指導を受けるようになった。S先生


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