福島県教育センター所報ふくしま No.103(H04/1992.6) -026/038page
もA男の前向きな姿勢を評価してくれた。
A男の学習状況は,K先生を通して両親にも伝えてもらい,「製図」「習字」の作品は,現物を直接見てもらった。両親は,今まで知らなかったA男の一面に驚き,姉とは異なる長所を伸ばしてやることの大切さを感じたようであった。
この結果,家庭内には温かい和やかな雰囲気が戻り,A男も「いらいらすることも少なくなった」とうれしそうに話してくれた。
これらの指導援助によって,A男の学校生活には明るさが見られるようになった。
5. まとめ
A男が「退学したい」と言った時,A男の内面を知ることにポイントを置いたことが,『学業不振』という本質的な問題を浮かび上がらせたものと思われる。
改善のポイントになったのは,家庭の協力が得られたことである。教育相談係のM先生のかかわりで,両親が変容したことがA男に大きな影響を与えた。
また,学校内で多くの先生に,A男の長所を伸ばすよう指導援助してもらったことが,A男の,学校生活を継続しようとする意欲を高めたものと思われる。
<学業不振から不登校となった児童生徒への対応>
学業不振から不登校となった児童生徒への対応は,児童生徒一人一人によって異なるものですが,ここでは,一般的な対応について紹介します。
○教師の対応
・簡単なものや本人の得意なものから取り組ませ,学習に対して自信を持たせる。
・学習のつまずきを明らかにし,学習への具体的な目標を持たせるとともに,各担当教師が協力して指導に当たる。
・失敗に対する恐怖をできるだけ除去するように配慮すると同時に,失敗をしたときにはそれへの対応の仕方を教える。
・発達途上であり,失敗は当然と考え子供の可能性を信じて,能力が発揮されるのを見守るという「待ちの姿勢」を大切にする。
○家庭での対応
・本人の不安定な気持ちを理解し,学習成績の結果などを見て,極端に刺激するようなことは言わないようにする。
・兄弟や他の生徒と成績を比較し,本人に焦りや劣等感を持たせないようにする。
・成績に関係なく,本人のパーソナリティを大切にし,子供の存在そのものを認めていくようにする。