福島県教育センター所報ふくしま No.106(H05/1993.3) -006/038page

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一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究

(第1年次)

 学 習 指 導 部


 学習指導部では,昨年まで5年間にわたって,研究主題「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究」のもとに一人一人の個性(「よさ」)を生かす学習指導の在り方について実践研究を行ってきた。今年度からはこれまでの成果を踏まえて,「一人一人の個性を生かす評価の在り方に関する研究」を3年計画で実施することにした。第1年次の本年度は,基礎的な資料を得るために「評価に関するアンケート調査」と,試行的検証授業として「試行仮説による小学校社会科における実践」を行った。

1.評価に関するアンケート調査

 教育評価の中の情意面(関心・意欲・態度)についてその問題点と課題を探るために,県内の小・中・高等学校教諭290名を対象に意識調査を実施した。
 その結果,情意面の評価を必要とする意識は高いが,実践状況においては必ずしも十分とは言えず,「主観的になりがちである」「評価規準の設定が難しい」などの悩みも多くうかがわれた。また一方では,評価の客観性を高めようという工夫や評価規準を明確に設定しようという努力もなされていることが分かった。

2.試行仮説による小学校社会科における実践

 この試行的検証授業では,単元の中に,自己評価を中心に,相互評価,教師からの評価を組み合わせ,学習活動のまとまりごとに評価機会を設定し,関心・意欲や思考力,判断力,表現力の高まりをとらえることをねらった。
その結果,単元の中で,学習活動のまとまりごとに評価の観点を絞って評価機会を設定することの有効性や,自己評価を中心に評価の手だてを工夫すれば,児童が自分自身を見つめ意欲を高めていくことが明らかになった。また,児童の相互評価は互いの「よさ」を認め合う「贈る言葉」として実施し,教師の総合的な診断と援助を各児童への「メッセージカード」として実施したことも一人一人の児童の「よさ」を見いだし育てていく上で効果的だった。

3.今後の研究への展望

 意識調査から明らかになった本研究実践上の課題は,情意面評価について,(1)自己評価の具体的な工夫,(2)評価の観点とその規準設定の工夫,(3)客観性を高める工夫などである。また,試行的検証授業からは,自己評価についてカード以外の方法の工夫,(1)(2)ともすれば過重になりがちな教師からの評価の,必要かつ十分な内容や手だてを明らかにすること,などが挙げられる。
 これらの課題を踏まえつつ,次年度以降の実践研究に臨みたい。


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