福島県教育センター所報ふくしま No.106(H05/1993.3) -020/038page

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《教育図書・資料紹介》

個性重視の原則に基づく教育を進めるために

 学 習 指 導 部 

◇ 個を生かす教育の実践 上・下 全国教育研究所連盟 編集   ぎょうせい 

 

 小学校では,すでに本年度から,中学校では来年度から新しい学習指導要領に基づいた教育課程が実施され,「基礎的・基本的な内容の定着と個性を重視した教育」は,いよいよ本格的に実践されます。
 本書は,全国教育研究所連盟に加盟している260余の教育研究所・センターの3年にわたる「個を生かす教育指導に関する実践的研究」を集約したものです。
 今回はそれらの中から,昭和62年度から5年間,福島県教育センターが継続して取り組んできた「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究」の内容で取り上げられたものを紹介します。
 まず上巻の第3章「個の可能性を広げる学習指靱と基礎・基本」では,本研究第3年次で実践しました中学校英語科の研究が,次の特徴的な四つの観点から取り上げられています。

(1)「基礎・基本」の定着と「個性」の伸長を対立的にとらえず,「基礎・基本」として共通に身に付けるべき内容の習得過程が,それぞれの子どもの「よさ」を生かす営みであると考えたこと。
(2)「基礎・基本」の習得過程に,「よさ」の発揮・伸長を位置付け,一つの指導過程に表したこと。
(3)「基礎・基本」にかかわる「よさ」の把握の仕方,「よさ」の位置付け方が,具体的に示されていること。
(4)自分の「よさ」を子どもたちに自覚させ,やがて,自らが個性を生かしていくようにと展望した指導であること。

 また,下巻の第7章「心豊かでたくましい個を育てる道徳教育」では,第4年次で実践した小学校道徳における研究が取り上げられています。
 この研究では,『先行オーガナイザー法』を用いての資料提示の工夫や仕方や,一人一人の「よさ」を生かす話し合い活動の場面で,『ミニ話し合い活動の進め方』や『意見交流の場の設定』などを工夫しました。そこで,子どもの独自性や創造性を大切にしながら道徳的価値観を育て,自分の生き方を見つめていく力を蓄えられるようにしました。
 新しい学力観に基づいた学習指顯を展開するに当たり,本書には多様な視点から,数多くの具体的な実践事例が載せられていますので,今後の参考に是非お勧めいたしたい図書の一つです。


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