福島県教育センター所報ふくしま No.106(H05/1993.3) -023/038page

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図3 I子のGAT検査

3. 主な指導援助

○温かく受容的にかかわり,I子の気持ちを受け入れながら,I子のよい面を引き出し自信をもたせた。
○係活動や遊びなど,友達と協調することが必要な機会をとらえ,自分の思い通りにいかなくても感情をむき出しにすることなく,話し合いで解決する喜びを味わわせた。
○自分の学力について客観的に評価できるようにし,次への意欲につないだ。

<家族へ>
○家族力動の見直しを図り,父母の好ましい関係と親子関係の改善を促した。
○兄姉との比較をしないで平等に接することを依頼した。
○広い範囲にわたって不安を抱いているので,I子の気持ちの理解に努めることが第一であると伝えた。

4. I子の変容
 指導援助を試みた結果,I子に次のような変容が見られた。
○自己中心的な態度は見られるものの, 10月の学習発表会では自主的に練習に参加し,途中で抜けることはなかった。
○11月の球技大会では,キャプテンになり練習した。友達との間で空回りすることもあったが,方法を変えて挑戦するなど我慢するようになった。
○家族のかかわりが改善され,人の話を素直に聴くような姿が見られた。

5.研究の成呆と今後の課題

(1)成 果
○担任と家族が連携して指導援助をした結果,家族間の人間関係の改善が図られ,I子の問題行動を改善させることができた。特に,担任がひたむきな気持ちで接したため,家族の協力も得やすかった。
○諸検査を活用したことによって,担任の目だけでは拾いきれない児童の心の動きを,客観的に理解することができ,適切な指導援助の手がかりが得られた。
○学級や家族への指導援助を並行して行うことが,児童の問題行動をより効果的に改善できることが分かった。このことから,人的環境による影響は大きく,人格形成に大切であることが分かった。

(2)今後の課題
○教師が家族へかかわることには限界があるが,家庭は生活の基盤であるため児童が安定して生活できるように,きめ細かなかかわり方を家族に理解してもらい援助していくことがさらに必要である。
○児童一人一人の理解を深め,よりよい指導援助を推進するために,教育相談を効果的に進めていく必要がある。
○児童理解の方法としての心理検査の活用について,内容・方法の面から,さらに研究を深める必要がある。


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