福島県教育センター所報ふくしま No.106(H05/1993.3) -026/038page
また「授業がおもしろい」と答えた生徒が常に95%を超えていることから生徒が自ら取り組んでいる姿が読み取れる。さらに,他のアンケート項目より,「またコンピュータを用いた実習を行いたい」と答えた生徒は毎回90%以上であり,興味・関心が持続的であることが分かった。
(2)学習面の効果
生徒の「考察する態度」および「考察の正答率」の変容を表したのが,次のグラフである。
1回目の「魚の個体群」についての実習では,「よく考えた,少し考えた」と答えた生徒は合わせて41%と半数以下であった。このことから,日ごろの授業では常に受け身であり自分から積極的に授業に取り組み疑問を解決していこうとする態度,および自ら考える習慣が身に付いていないことが分かる。その結果として,平均正答率も25%と低い値であった。
しかし,2回目以降回を重ねるごとに生徒の「よく考えた,少し考えた」と答えた割合が上昇した。4回目からは,ほぼ90%の生徒が積極的に考察し結論を導き出そうとしていることが分かる。また,考察の平均正答率も各実習により問題の難易度・設問の数の違いはあるが,2回目以降徐々に上昇している。これらのことにより,「考察する態度・習憤」が確実に身に付いてきているといえる。
以上より,表計算ソフトウェアの操作を取り入れた実習プリントを作成し,これを用いることで,生徒の興味・関心を非常に高めることができた。従来の講義形式の授業では学習意欲の低い生徒も,実習プリントに基づきコンピュータを操作する中で授業に集中し,主体的に意欲をもって取り組む姿がみられた。さらに表計算ソフトウェアのグラフ機能を用いることにより,単位時間内に十分に到達目標に達することができた。従来はグラフ化のみに時間を要し,実習の本来の目的であるデータからの推論や考察を十分に行うことができなかった。そのため,常に到達目標に達せず不完全な状態で授業が終了してしまうことが多く,興味・関心を高めるまでに至らなかった。しかし,今回の表計算ソフトウェアのグラフ機能を利用した「生態実習プリント」を使った授業は,生徒の思考する姿を作り出す一つのきっかけとなったと思われる。6.おわりに
市販ソフトを有効かつ手軽に利用する方法があれば,多くの教師が抵抗感なくコンピュータを道具として用い,授業に取り入れることができるのではないだろうか。
今後,今回の実践を発展させ表計算ソフトウェアを用いた生物実験実習書を作成していきたいと考えている。
(なお,表計算ソフトウェアはロータス1-2-3を使用した。)