福島県教育センター所報ふくしま No.106(H05/1993.3) -028/038page
母子分離不安から不登校となった児童への指導援助 1.はじめに
今回の事例は,母子分離不安が原因で不登校になった小学校1年生のA子が両親の努力と学級担任の指導援助によって,再登校できるようになったケースである。
2.問題の概要
○ 入学して1週間が過ぎたころから,朝,起きるのを渋るようになり,頭痛や腹痛を訴えて登校を嫌がるようになった。
○ 2週間目ころからは,起きると「お母さん,お母さん」と母親にまつわりつき「歩けない」とか「勉強はいや」などと言って,断続的に欠席する日が多くなった。
○ 5月ころからは,急に赤ちゃん言葉を使ったり,できる事も「やってちょうだい」とせがむようになり,『赤ちゃん返り』が見られるようになった。
○登校できる日は,母親の車で学校の昇降口まで行くが,すぐに戻って来て再び章に乗ってしまうことが多かった。
○母親はA子を強くしかるが,A子の言うがままになっている。父親はA子が休んでいることに対して何も言わず,無関心である。3.A子のプロフィール
(1)家庭状況
○父親は長距離トラックの運転手で,帰宅日が週に2日か3日である。A子については,ほとんど母親任せで,かかわりが希薄である。
○母親は,A子に対してはやさしく過保護の傾向が強い。
○A子が幼稚園の年長組の時に妹が誕生した。
(2)A子に関する資料
1.生育歴
○熟産で正常分べん
○出産時の体重は2675g
○幼いころから人見知りが強く,母親の後追いをすることが多かった。
○幼稚園の時,登園を時々距否していた。外での遊びが少なかった。
○父親とは乳児期からほとんど遊んでもらっていない。
2.諸検査の緒果
○社会生活能カテストの結果,『集団参加』が4歳程度である。
○親子関係診断テストでは,準危険地帯で(母親の場合)溺愛型。4.診断
(1) 妹が生まれるまでは,父親が留守のため,やさしい母親の愛情を一身に受けて大事に育てられていた。
妹が生まれてからは,大事なお母さんが,妹(赤ちゃん)にとられてしまったように思い,常に母親と一緒でないと,不安や緊