福島県教育センター所報ふくしま No.110(H06/1994.3) -002/038page

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特別寄稿(論説)

東京大学大型計算機センター教授  石田晴久

学 校 に お け る コ ン ピ ュ ー タ 教 育 の 課 題




東京大学大型計算機センター教授 石 田 晴 久




重複の多いコンピュータ教育

数年前まで,わが国の小中高校におけるコンピュータ教育は,欧米に比べて非常に遅れているといわれていた。しかし,ここ二,三年で状況はかなり変ってきている。例えば,中学校には技術家庭科の一部として「情報基礎」が正式に取り入れられ,昨1993年4月からコンピュータ(パソコン)そのものについての教育が始ったのはその表われである。

また小学校では正式の科目というわけではないが,部分的にバソコンの導入が進みつつあり,文部省主催による小学校教員に対するコンピュータ講習会も始った。一方,高校とくに職業高校でのコンピュータ教育も徐々に進んでおり,大学の入試科目にもコンピュータに関するものが入りそうな情勢になっている。

こうした動きは,コンピュータ利用が将来誰にとっても不可欠になることを考えると一応好ましいといえようが,問題は,各学校のレべルで何をどれだけ教えればよいかについてのコンセンサスがないことと,学校によって取り組み方がマチマチで教育レべルが揃っていないことである。

筆者は,ここ数年中学校の技術家庭科の教科書の監修を行ってきた関係で,学校関係者の方々といろいろ話をする機会をもった。そうした見聞をまとめてみると,印象としては,小中高校・短大・大学(の文化系コース)で,現在はほとんど同じようなバソコンがらみの教育が行われているところが問題である。

中学の「情報基礎」の教科書の場合,当然,文部省の指導要領に沿って執筆されている。しかし,規制綬和を意識してか,この指導要領には,教科書の内容としてはほとんどキーワードしかあげられていない。教科書の40ペ−ジほどのスべースに何をどれだけ書くベきかまでは規定されていないのである。

ただ指導要領にあげられたキーワードはすべてカバーしなければならないから,中学教科書には,コンピュータの仕組み,ワープロ,表計算,データべースソフト・お絵書きソフトの簡単な使い方,BASICによるプログラミング,コンピュータと社会(含パソコン通信についてのひとこと)などがすこしずつ触れられていることになる。

ところが,内容の深みには大差があるものの,この内容は,高校・短大・大学(文科系)でもほぼ同じである。ワープロやBASICプログラミンダは一部の小学校でもやっているところがある。要するに,いまはいろいろなレべルの学校でほぼ一斉にコンピュータ教育が始ったために,基本的


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