福島県教育センター所報ふくしま No.110(H06/1994.3) -005/038page

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所員個人研究


行動療法を通して心の安定を図るLD児への指導援助

−シェーピング法,トークン・エコノミー法を通して−


教 育 相 談 部 金 谷 哲



I 主題設定の理由

最近,学習障害(LD)の問題が教育上重要な課題となっている。LDの子どもたちは,行動統制がうまくいかないために,周囲の人に注意されたり,叱責されたりすることが多くなりがちである。そのため,思春期,青年期になると劣等感,自信のなさなどから自己評価が低くなり,非行や不登佼などの二次的な情緒障害を示すことが多いといわれている。このような,LD児に対して,一人一人の実態に応じて,認めたり,ほめたりする機会を意図的,段階的に設定していくことにより,自己像を高めながら,心の安定を図るための指導援助の方向を探りたいと考え本主題を設定した。

II 研究仮説

LD児の実態に応じてシェーピング法,トークン・エコノミー法を取り入れた援助によって,目標達成感を味わわせるとともに,学校集団の中で級友から認められる指導援助を行っていくことにより,自信を高め,心の安定を図ることができるようになるだろう。

1 仮説について

(1)学習障害(LD)とは

全般的に知的な発達の遅れがあるわけでもなく,環境的な問題が主な原因とも思われないのに,認知能力の偏りから,学習上行動上に困難を持つ障害のこと。

(2)シェーピング法とは

一定の目標行動に至るまでの行動を段階的にスモール・ステップの形で設定し,順次これを遂行させて,最終的に目標行動を獲得させること。

(3)トークン・エコノミー法とは

一定の課題を正しく遂行できたとき,あらかじめ約束した条件にしたがってトークンを報酬として与え,目標とするオべラント効果を強化するシステム。

III 研究方法

1 研究方法

小学校6年男子(S男,H男)

2 研究方法

(1)LDの理論を文献により研究する。

(2)チェックリスト,心理検査などにより対象児童の実態把握を行う。

(3)児童の実態に基づき,指導援助の方向を決める。

(4)シェーピング法,トークン・エコノミー法を取り入れた指導援助を行う。

(5)対象児童の変容を考察する。

IV 研究の実際と考察〔S男の事例から〕

(1)問題の概要

○計算技能や漢字の習得がすばらしいのに,新しい知識を理解するのに時間がかかり,物事を筋道立てて考える力が乏しい。


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