福島県教育センター所報ふくしま No.110(H06/1994.3) -014/038page
あったものと考える。
これらのことから,地域素材を教材化することにより,
1.自分たちの地域への関心が高まり,地域に愛着を待っようになった。
2.地域教材により歴史的人物や事象を身近なものとしてとらえることができた。
3.地域教材の活用によって,地域の他の時代の歴史的事象にも関心が広がっていった。
などの効果があった。
この他にも地域素材を積極的に取り入れた教材による単元構成を進めれば,
・身近な生の歴史的資料を活用できる
・主体的な学習が進めやすい
・地域の歴史資料の多さに気付くことができ,歴史への関心が強まる
・資料収集とその活用能力が向上するなどの効果を期待することができる。
自分の地域の歴史を振り返ることは,地域で生活してきた多くの人々の働きの上に現在の自分があることを理解することである。地域に生きた先達への共感的な理解により,自分の地域を誇りとする気持ちが生まれるのである。
自由民権記念館にある河野広中を中心とする様々な遺品や資料,銅像やその碑文を目にし,地域の人達の河野広中を誇りとする気待ちと,自分たちの地域の発展を願う気持ちを児童は感じ取ることができたように思う。
今回の学習を契機として「三春町の大昔の様子を知りたい」「田村郡にも,戦争中B29が飛んできたのか調べてみたい」など,今までの歴史学習の内容を自分たちの地域の歴史と重ね合わせて見ていこうとする姿勢が見られるようになった。
ただ,地域素材を教材化する場合,次の様な間題点がある。
1.地域の歴史教材を開発する場合,その地域の歴史に対する専門的な理解が必要なことである。「河野広中と自由民権運動」の教材開発も数年の時間を費やしている。
2.郷土に残る資料等の内容が難しく,小学生に理解できる学習内容に再構成して単元構成することが大変なことである。特に,文献資料はかなり工夫し,再構成しなければならない。本実践においては,碑文にかなを付けたり,文語体表記の河野広中の県令三島通庸(みしまみちつね)弾劾演説をロ語体に直すなどして,学習資料として活用した。
3.地域教材を教育課程にどのように位置付けるかも大きな問題である。これは地域教材の開発とともに,学校全体の問題として考えていかなければならない。
5 おわリに
それぞれの地域にはそれぞれの歴史がある。その教材化が活発になれば児童に生きた歴史を感じさせることができるだろう。自分の住む地域をよく知り,郷土を愛する態度を育てることこそ歴史理解の基礎であろう。
(研究協力校 三春町立三春小学校 教諭 菅 野 宏)
参考図書「地方の人物に学ぷ歴史の授業」(東京書籍)