福島県教育センター所報ふくしま No.110(H06/1994.3) -025/038page
「学校不適応児童生徒への援助の在り方に関する研究」
(第1年次)
教 育 相 談 部
本研究では,児童生徒の不登校をはじめとする「学校不適応」の背景にあるさまざまな要因の本質を調査・分析によってとらえ,適切な援助の在り方について実証的に研究を進める。
本年度は,主題についての考え方を明示し,研究仮説を設定した。さらに,研究計画によって,県内中学校248校の中から学校規模・地域等を考慮して,22校,2,072名を対象にアンケート調査を実施し,学校不適応伏態にある生徒の実腹及ぴ生徒の学校不適応意識,個々人が持つ価値観等を明らかにして,学校適応に向ける援助の方向性を追究した。
1 研究の成果(1)調査し分析した結果,学校不適応の状態を示す割合が大きい生徒にみられる傾向を次のようにとらえることができた。
○ 友人や教師からどうみられているかを気にし,無理して行動しており,望ましい対人関係が築けないでいる。
○ 自分に自信の持てるものがありながら集団の中では,思ったように行動できず葛藤,不安を抱いている。
○ 多様な価値観が見いだせず,心の柔軟性を持てないでいる。
○ 学校での生活全般に無気力感が漂い,意欲が停滞している。
(2) 不適応状態にある生徒に対して,どのような教育相談的な援助を差しのべたらよいかを調査・分析に基づいて考察し,その望ましい援助の方向性を明らかにすることができた。
○ 相互受容,相互支持の中で,生徒同士が信頼関係を深めていけるよう環境と個の「調整」の場面を確保し,人間関係を醸成する指導援助
○ 自分に対する気づきを深め,集団の中で自己表出が促進される環境と個の「構成」に向けた指導援助
○ 教師自身の多様な価値観に基づいて,生徒一人一人の個性やよさを発揮できるような活動の場を重視し,学校生活に多様な価値観を見いださせる指導援助
○ 生徒の話に耳を傾け,生徒の悩みを教師自らのものとして共感的に受けとめ,生徒一人一人の内面を理解しようとする個に応じた指導援助
2 次年度の研究の方向次年度は,今年度の研究成果を踏まえ,集団・対人への適応意識や個の持つ適応力を高めるために,環境と個の「調整」「構成」に向けた指導援助の試案を模索していく。