福島県教育センター所報ふくしま No.110(H06/1994.3) -027/038page
生徒指導・教育相談実践講座
あ な た も カ ウ ン セ ラ ー
−集団不適応児童生徒への指導授助−
教 育 相 談 部
107号 多動傾向(LD)から集団不適応に陥った児童生徒への指導援助 108号 場面かん黙のために集団不適応に陥った児童生徒への指導援助 109号 いじめのために集団不適応に陥った児童生徒への指導援助 110号 対人不安から集団不適応に陥った児童生徒への指導援助 集団不適応の児童生徒は,同学年の子供たちと比較すると,対人関係がうまくいかなかったり,社会性の発達が遅れていたりすることが多いようです。このため,学校生活におけるさまざまな場面で,対人関係に不安を感じ,特に人間関係における葛藤にうまく対処することができず,集団から孤立することになりやすいと思われます。
このような対人関係の不安は,幼児期には「母子分離不安」の形で表れてきます。これは.最初に体験する人間関係である「母子関係」が脆弱であるために,人間関係における不安を抱きやすい状態になると考えられています。この場合,母子のかかわりをしっかりと体験させることで改善が図られていきます。
一方,中学生や高校生といった思春期にも,対人不安は高まっていきます。この時期は,子供から大人への過度期として位置づけられており,生徒自身が,自己を確立させていくという思春期の発達課題(エリクソンのいう『自我同一性の確立』)を成し遂げていく時期にあたります。
この発達課題は,自分というものを他者とのかかわりの中で明確に把握していくことで達成されていくものですから,友人との交流や集団活動は欠かすことができません。ですから「自分で自分のことが分からない」という悩みを訴えてくる子供たちの話に耳を傾けていると,必ずといっていいほど,「人間関係がうまくいかない」という悩みを訴えてきます。
このような生徒は,「自分は他人からどのように見られているか」ということを過度に気にする傾向があります。こうした自己意識が,思春期に高くなるのは必然的な現象で,まだ安定した自己評価を持たない生徒の場合,対人不安を引き起こす大きな要因となっています。
今回の事例は,このような思春期における対人不安から集団不適応に陥った女子生徒の事例です。小学校高学年の前思春期から症状が始まり,医療機関や学校との連携が適切に行われ,改善されていきました。